

MP40短機関銃を構えた兵士のフィギュアはタミヤの最新プラモデル「ドイツ機関銃チーム(大戦中期)」の《下士官》氏である。立膝の姿勢でパンパンに張った太ももや、背筋がぐっと盛り上がった造形のおかげで発砲の反動に吹き飛ばされまいとする力の入った姿勢に実感がこもっている……。と書けばとおりいっぺんこのフィギュアを褒めたことになるであろうが、さにあらず。10年以上に及ぶタミヤの「3Dスキャンによる兵士フィギュア」において、じつは射撃ポーズを取っているフィギュアは2014年発売の「1/35 WWI イギリス歩兵セット」のみだったが、両手以外の部分が身体に接触した射撃ポーズのフィギュアは本作が初めてなのだ。
鉄砲に押された身体が発揮する反力は「ただ力の入った人形に鉄砲のパーツをポンと持たせただけ」では伝わってこない。このフィギュアの醸し出す異様なリアリティのキモは「右肩に空いた穴」にこそある。

人間の右肩にこんな巨大な穴が空いていたら大事件である。しかしこれはプラモデルであり、造形のマジックは必ずしも現実の人間の表面をなぞるだけで起こるものではない。右肩の穴にMP40の折畳み式ストックがすっぽりと嵌まり込む設計なのだ。
ストックが軍服を押しつぶし、肩の肉にキツくめり込むように密着した状態を硬いプラスチックで表現するのならば、両者の位置関係を「接触(=距離ゼロ)」よりも一歩進んだ、「距離マイナス」の位置関係にするべきだと判断したのだろう。お陰でMP40の全長ををデフォルメせずに右肘をぐっと引き、左腕も適度に曲げた状態のポージングが可能になっている。

連続的な反動を抑え込む身体の演技と同様、このフィギュアの動的な様相を伝えてくれる顔パーツは「来るな!」と叫んでいるように見える。よく見るとわずかに上の歯が彫刻されていて、タミヤの1/35スケールの兵士フィギュアのなかでもかなり先鋭的な造形となっている。小指の先ほどの顔パーツでも、そこに個性がしっかりと宿っている。

左腰のマガジンポーチは立膝に押し上げられて横方向に逃げるカタチになっているが、人体とのまとまり感を損ねずにごく自然に”そうなっているように”見える。実物は「硬いマガジンが入った布製のポーチ」であるにもかかわらず、周囲の衣服との場所取り合戦の結果として奇妙な形に変形しており、これは例えば3DCGモデルを駆使したゲームに登場するロボットのように「ユニット同士がお互いにめり込む」という現実にはありえない処理をあえて取り込んだ結果だ。

この《下士官》が「ただ鉄砲を構えるフリをした人」ではなく、いままさに迫りくる敵に向かって短機関銃を連射しているということがわかるのは、連続的に与えられる鉄砲の反力や声を上げている表情を動的に捉え、プラモデルならではの3次元的なトリックを用いてそれらを現実以上に強調しているから。色を塗らずただ組み立てるだけでも、当然ながらその妙技は存分に味わえるのである。