

マーダーIといえば、ドイツ軍がたくさん作った「強力で対戦車戦闘もできる大砲を、とりあえずそのへんにある車両に乗っけたやつ」のうちの一種です。フランス軍から鹵獲した装甲車であるロレーヌ37Lの車体に、強力な対戦車砲である7.5㎝ Pak 40を組み合わせたもので、「正面から戦車と殴り合うのは難しいけど、待ち伏せや地形を利用した攻撃ならいい勝負ができる車両」として製造されました。
なんせ車体がフランス製なので、整備などの手間を考えると西部戦線(第二次世界大戦で主にヨーロッパの西側繰り広げられた戦い)で運用する方が便利だった……という事情もあり、大戦後半にはマーダー1はフランスに送り込まれ、ノルマンディから上陸してきた連合軍と戦っています。その頃の西部戦線では連合軍(イギリス軍・アメリカ軍などの西側諸国)が広い範囲で制空圏を獲得しており、空からドイツ軍を攻撃することも多々ありました。そんな時期らしいポージングでまとめられているのが、タミヤの「1/35 ドイツ対戦車自走砲 マーダーI」です。



2020年に発売されたキットということもあり、フィギュアの造形は3Dスキャンを駆使したもの。乗員の顔つきや、ちょっとオーバーサイズのジャケットを腰のベルトで締めて着こなしていることがわかるジャケットのサイズ感など、生々しい彫刻が見どころです。

また、デジタル設計のおかげで車体とフィギュアがビシッとフィットするのも嬉しいところ。「装甲のふちに肘を引っ掛けているポーズ」みたいな調整が難しそうなポージングも、しっかり決まっています。

で、組み上がってみると、二人とも上空を見上げたポーズ。車両に乗っている兵士は双眼鏡まで持っています。なにもボンヤリと空を見上げているのではなく、これは連合軍による上空からの攻撃を警戒しているポーズなんですね。当時のドイツ軍は連合軍の戦闘攻撃機を「ヤーボ(Jagdbomber:ヤークトボマーの略)」と呼んで恐れていたそう。特にマーダーIのようなオープントップで上から車内が丸見えの車両は、飛行機から攻撃されたらひとたまりもありません。ちょっとしたエンジン音が聞こえただけでも「今なんか聞こえなかった?」とビビって上空を見てしまうのも、当然のことなのです。

というわけで、大戦後半のドイツ軍が置かれた状況すら伝わってくる、マーダーIの搭乗員たちでした。苦しい状況が伝わってくるフィギュアですが、シチュエーションが固まっているので、組み立ててそのまま塗装してもストーリーが伝わってくる親切設計のキットとも言えます。マーダーIを作った際には、ぜひ一緒に並べてあげてください!