

タミヤから新発売となった「フルビュー メルセデス・ベンツ 300SL」の美しすぎるボディ。2015年に発売された本キットにはもともとホワイトのボディパーツが入っていたが、今回は内部構造を完成後も楽しめるようパーツの表裏を形作る金型を丹念に磨き上げることによって、いっさい曇りのないクリアーな見た目を実現している。このボディパーツの意義を極限まで引き出すのならば、さてどうするべきかと考える。
タミヤの300SLを手にするのは3度目。毎度驚かされるのがマルチチューブラースペースフレームの造形だ。乱暴につかめば撓んでしまうほど細くて頼りない骨組みを丹念に切り出して、説明書の言うがままに支柱を立て、アッパーフレームとロアフレームを合体させるとガッチリとした強度を持つ剛体に変化する。現代的なクルマのシャーシとは全く違う、工芸的な魅力をたたえた構造。

このフレームを見せることこそ、”フルビュー”の名前に似つかわしい仕上げだろう。このキットの惜しい点があるとすれば、パッケージ写真が黒い背景で撮影されているために「ボディがクリアーパーツであること」はわかるのだが、中に注意深く収められた黒いフレームは背景に溶け込んでほとんど見えないことである。ならば、目立つ色でフレームを塗るほかない。GSIクレオスの「スーパーリッチゴールド2」を塗ると、まるで宝飾品のような造形美が眼前に現れる。

300SLと言えば上に跳げて開けるガルウイングドアがその最大の特徴だろう。これが採用されたのはシートの左右にマルチチューブラースペースフレームが通っているからであり、これを跨いでシートに腰を鎮めるためにはドアを上に持ち上げるほかなかったのだ。フレームとキャビンのバスタブを仮に合わせると、その理屈が直感的に理解できる。

ここまではノーマル仕様の模型でも実践できることだが、フルビューならばこのフレームにボディを被せることで300SLの異様な設計が楽しめる。キャビンを組み込むとフレームはほとんどが見えなくなってしまうのだが、このキットはボディとフレームだけで接合可能なのでキャビンを接着しなければ完成後もそれぞれを着脱して千変万化の見た目を堪能できるという寸法だ。

タミヤの傑作カーモデルが教えてくれる300SLという名車の恐るべき構造。フルビュー仕様が発売されたことによって、キットの持っていたポテンシャルはさらに引き上げられた。フレームをどう見せるか、パワートレーンをどう見せるか、ラジエーターやキャビンを組み込むのか、カットするのか、ボディを半分だけ塗装するのか……。ありとあらゆるイマジネーションを駆使して、プラモデルだからこそ味わえる楽しい仕上がりを考えるのが、このキットへの最大の賛辞になるはずだ。