

6月の末、晴れた日曜日の朝。
ポストがゴクンと音を立てたので覗いてみると久保田雅人が入っていた。
わあ。
そうだ。買ってたわ。珍しくこの手のプラモデルを。
なんかそう……ふだんはこういうの、買わないんだ。なんと言えばいいだろうか。このわくわくさんを製品化した秋東というブランドはこれまでに「餃子のプラモ」とか「寿司のプラモ」とかを発売してきているが、そういうのは買ってこなかった。いやだって……餃子とか寿司って、そういうんじゃなくないですか。組み立て方の工程も全然ホンモノと違うし……。飛行機やガンダムだったら、「ああ、本物も多少はこういう工程で作られるのかな」って思えるけど、米粒を一粒一粒接着していくのはお寿司を握るのと全然違うじゃないですか。

そんなこと言ったら人間の作り方と人間のプラモデルの組み立て方だって違うのだが、それでもなぜか「わくわくさんなら、まあいいか」と思って買ってしまったのだった。あと筆塗りでなんか適当なプラモを塗りてえなみたいな気持ちもあったし。わくわくさんなら、完成した後は適当なおもちゃの横に置いておくだけでなんかおもしろくなるし。

2025年にもなって「3Dスキャンしてるから服のシワがいいね」なんてことを買った側がわざわざ言及する必要はないのだが、こうして本物と並べてみると……いやそんなディテールのことを気にしてる暇はないな! そういうものとしてスルーしてきたけど、すごい色の服着てますね! これを、俺が塗るのか。塗らねばならぬ。ガンダムの胴体より色が多い! 「自分がやる」と認識して初めて、幼少から見てきたおっさんの色の多さに気づく夏。

長机の脚にはランナー(パーツがくっついているワク)そのものを使うらしい。なるほど。ここってすごくワクワクさんっぽいな。思い出してみれば、ワクワクさんっていつも廃材でオモチャを作ってたもんな。ペットボトルとか紙コップとか……。

そうそう、廃材をハサミで切ってさ。「テープでペタリ!」ってな。コーナーの主題歌とかは全然覚えてないけど、「テープでペタリ!」だけは不思議と覚えているな。ハサミとテープは塗装見本だとそれっぽく見えるが、パーツ状態だと意外と朴訥な印象であった。
これがスケールモデルやガンプラだったら「ハサミの持ち手部分はドリルで開口すべきか」とか「セロテープホルダーの回る部分は、プラパイプとかバーニアパーツの改造でもっとそれっぽく作れるのでは?」という妄想計画を頭の中で疾走らせるのだが、わくわくさんに於いてはそれが正しいことなのだろうか? やることやらないこと、どちらが『つくってあそぼ』スピリッツを持っているのだろうか。教えてくれ、わくわくさん。

ここに至って私はようやく気づいた。
私はこのプラモの箱を開けた瞬間、「不在の寂しさ」に襲われていた。
わくわくさんがいるなら相方もいなきゃダメだろ……。ゴロリが……! 1/20ゴロリのプラモが必要だ! と。だが、わくわくさんプラモへの向き合い方を、頭の中のわくわくさんに問うたとき、私がゴロリになったのだ。
俺自身がゴロリになることだ。
──人間は羆には勝てねえ。空手も柔道も習ってねェ羆にだ。
だったらどーするよ。
なっちまえばいいじゃん羆に。
工藤健介(夢枕獏/板垣恵介『餓狼伝』19より)