2023年10月1日、東京ビッグサイトで開催された全日本模型ホビーショーに来ていた自分は、とある海外模型の輸入代理店ブースに釘付けになっていた。「表示価格より半額」という紙が貼られた棚に並ぶ、普段あまり見かけない様々な海外メーカーのプラモデルの山。
初めて目にするような舶来品のプラモデルたちが半額で手に入るのか…?こんな面白い機会はなかなかないぞ!と思い、せっかくなので普段ならまず手に取らないカテゴリーのプラモデルを記念に買うことにしたのであった。
選んだのはAIRFIX製の「1/180 H.M.S.ヴィクトリー号」という帆船のプラモデルだ。戦艦のプラモデルを何度か組んだことはあるが、帆船のプラモデルに触れるのは初めて。いやしかし箱が長い。あまりに細長いので会場から持ち帰る際にもなかなか気を遣った。
ちなみに購入の決め手となったのは、箱に書かれたスケールサイズ。「1/180スケールの帆船」と言われてもサイズ感が全く分からなかったのである。「1/24のカーモデル」「1/35スケールの戦車模型」「1/150の人間ミニチュア」……。これらは自分にとってすぐにサイズ感を想像できるが、帆船模型に触れたことのない自分には1/180という縮尺があまりにも未知のもので、その大きさが気になってしまったのだ。
出てきたパーツは…デ、デカい!やっぱりデカいぞコイツ!帆船と言われて思い浮かぶ、ボテッとした船体を構成する左右割りのパーツ。木のパネルを貼り重ねた船側の表現が見事で、思わず指で撫でてしまった。そして箱の中には、糸の巻いてあるボビンのようなモノがゴロンと2個入っていた。買ったのは裁縫キットではなくプラモデルだけど、これは一体…?
編み機「あの時助けていただいた機織り機です。」
説明書「お前がツルになるんだよ!」
なんと、帆船のマストに張られたシュラウドと呼ばれる網(海賊たちが登って酒を呑んだり哨戒したりしているアレね)を、恩返しのためお前がツルになって編めと言われてしまった。オレが何をしたって言うんだ。
縦の糸は私 横の糸も私……。これが本当の「舟を編む」なのか。そうなのか。説明書に書かれた「ココのシュラウドはヨコに○巻き、タテに○巻きしろよ。」という指示に従い、編み機に刻印された番号を確認しながら糸を巻いていく。ちなみにヴィクトリー号のシュラウドは大小合わせて12枚あるらしい。マジか。
偶然の出会いとちょっとした好奇心から、これまで体験したことの無い、新鮮だけど途方もない作業が始まるのであった。めでたし、めでたし。
ごく稀に真面目にプラモデルを作るらしいが、基本的には酒の力を借りながら夜な夜なミキシングでモンスターを生み出す等の活動に力を入れている。