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戦車を吊って飛ぶヘリが、夢の1/35スケールで発売されたって話/ICMのCH-54

 デカいプラモデルを買ってきて箱がデカいと喜ぶのはとても当たり前なのですがおもしろいんだからしょうがない。1/35のスカイクレーンです。ウクライナのメーカー、ICMが必死で作った超新作。イラスト見たら分かると思いますけどお腹のところがゴッソリと空洞になっています。まるでサンダーバード2号のよう。これは欠陥ではなく、ここに輸送用のモジュールをくっつけたり大きな物をぶら下げたりするためにこんな妙なカタチになっているのです。

 ハコを開けると白いハコが2個出てくる。なんでやねん!とツッコむのも買った人にだけ許される特権です。弁当も二段だと嬉しいのでプラモデルもどんどん多重構造になってほしいですね。なってほしくないですか?

 さて、オレはこのヘリコプターがものすごく好きで、古くはタミヤの1/100スケールのものがありますがこれはイベントなどで袋詰めにされて売られているのをよく見かけます。見かけるたびに買うので家の至る所にCH-54が隠されており、もはやどこに何個あるのかわかりません。リスかよ。

 もう少し大きいスケールとしては1/72でイギリスレベル(現在ではドイツレベル)から発売されているものがあります。これもひとつ持ってるんだけど最近はプレミアムが付いているのでもったいなくて組めない。組めないとか言ってると一生組めないので組んじゃおう。そういう気分にさせてくれるのが今回の1/35モデルなんですよ。だってこれがあればもう完璧じゃないですか。見てよこのリベット。すんごくない?超精密、超リアル。ごっつくて、強そうで、偉い。

 1/35だと何がいいって、スカイクレーンは胴体の下になんでも吊るんですよ。飛べなくなった戦闘機とか戦車とか家とか消火用のタンクとか、なんならガンダムの腕とかティラノサウルスを吊ってもいい。とくに戦車(M551シェリダン)をぶら下げている写真が有名ですが、戦車とヘリコプターが物理的にくっついている情景なんてこのヘリコプターくらいでしか作れないわけですからオンリーワンのスターなんですよ。そもそもいままでなんで1/35で製品化されなかったんだ、っつう話。

 なぜならデカいからだね。6枚あるローターの一本が500mlのペットボトルより長い。ヘリコプターの模型のヤバいところはヒョロヒョロのローターが円周状にディスプレイする面積を専有することであり、真っ先にローターが折れて不燃ごみになってしまいます。壊れたら悲しいから、これが完成したら天井から吊ろうか。戦車吊ってるヘリコプターが天井から吊られているの、なんか昔の人の宇宙観みたいで良くないですか。

 ただデカイだけじゃなくて、ちゃんと航空機らしい繊細な表現が入っているのもいいです。配線とか配管とか操作用のコンソールなんかもう、カニカマの繊維みたいなのがビッシーっと彫刻されていて推せます。大きさと緻密さのコントラストが生むシンフォニーだね。

 高額大型モデルだけあって、パーツ数も工程数もかなり多い。やる気満々のプラモデルです。こんなに好きなものがプラモデルになっていいんでしょうか。みなさんはちゃんと好きなものがプラモデルになってますか?欲しいものは「コレがほしいぞ」って毎日唱えましょう。夢はいつか叶うので。

 デカくてひょろっとしたヘリコプターだから強度が心配ですが、内部に桁を入れまくる構造だから大丈夫(のはず)。長い骨格に外壁をビタビタとくっつけていくパーツ構成で、たとえばいまから戦車を吊り上げるぞ〜っていうシチュエーションで金属線かなんかを使って宙に浮かせたような情景を作るのも楽しいでしょう。っていうかそれをやりたかったんだよねみんな。

 実際に1/35スケールの装甲戦闘車両を横に置いてみると、このヘリコプターがどんだけデカイのかわかります。スケールの違うものを好きに並べて特撮ごっこをするのも模型の楽しみではありますが、直接模型と模型が触れ合ったディスプレイにしたいならスケールを揃えたくなるのが人情というもの。遠くウクライナの朋友が実現してくれた、「1/35で欲しいヘリコプター選手権第1位」のスカイクレーンをみなさんもご賞味ください。そんじゃまた。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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