タミヤの1/35MMシリーズ最新作、「陸上自衛隊 16式機動戦闘車C5 (ウインチ装置付)」です。ヒトロク式というのは戦車みたいな砲塔がくっついた8輪車なんですが、5年くらい前にもうタミヤがプラモデル化してるじゃないですか。スゴいんですよタイヤの動きとか。組みやすくて着実でしかもウネウネ連動するギミックがヤバい。組んだほうがいい。それにしても今回はなんだろう、商品名に「ウインチ装置付」って書いてあるから、単にウインチが追加されただけなのかなと思ってたんですよ。そしたら全然違うの。ヒトロク式の魅力がグーンとUPした、ガンプラで言うところの「Ver.1.5」(しかも作る人目線のおもてなし付き)みたいな感じになっていました。偉い!
これが2018年、静岡ホビーショーに来ていた個体です。カクカクしていて背が低くてかっこいいでしょ。自衛隊の車輌というのは決められた予算に従って少しずつ増備されていくなかで、年度ごとにちょっとずつ改良されるんですって。で、タミヤが以前立体化したのは「C1」と呼ばれる初年度に調達された仕様だったんですが、今回新発売されたのは5年目に調達された「C5」というタイプなんですね。
今回のメインはこのサカバンバスピスの兄弟みたいなパーツ(これがウインチ装置です)……と思いきや、よく見たらこのパーツを含めてめちゃくちゃ大きいランナーが2枚、完全なる新規造形になっています。
説明書を読むと、「C4」からはエアコンが付いたり(付いてなかったの?!)、アンテナ損傷防止ガードが増設されたり車体表面の滑り止め加工やフックの増設など、運用しながら「こうしたほうがよくね?」と気づいた改良ポイントがめちゃくちゃ詳細に再現されています。なんだ、ちょっとパーツ足しただけじゃなくて「最新装備の最新の姿を真面目に作っちゃうぜ!」という太っ腹キットだったのね……。
そしてさらにいい感じなのが砲塔後ろにあるバスケット(荷物とかを入れるところ)のメッシュ部分がエッチングパーツになっているんですよ。自分でナイロンの網を切って貼ってああ難しい……としょんぼりする必要はもうありません。
曲げ方も貼り方も説明書に書いてあるんですが、最近のタミヤはちょっと扱いづらそうなエッチングパーツも着実にカタチにできるようノリシロや曲げ加工の方法についてもほぼ未経験でなんとかなるように設計しています(瞬間接着剤とピンセットだけは用意しようね)。
そしてさらに嬉しいポイントが車外で周囲を警戒する立ちポーズの乗員フィギュアが新たにセットされたこと。おそらく3Dスキャンを使って起こされたであろう実感溢れるシワが最高なんですが、キレイにシュッと立ったポーズなので胴体&両足は前後貼り合わせですぐにカタチになるのがいい(リアルを追い求めすぎとパーツ数が増える傾向にあるからな)。楕円型のパーツはフィギュアを安定して立たせるためのベースだよ。
スキルに合わせて主砲のマズルブレーキの穴をデカールにするか自分で開けるかを選べる仕様(自分で開けるときはマスキングシートに印刷されたドットをガイドにしようね、みたいなのが興奮するのよ)とか、小さな窓を透明のまま塗装できるようにマスクシールが入っているのとかもマジで偉いんだよねこのプラモ。以前C1は作ったんだけど、こんなにちゃんとおもてなしされていたことをすっかり忘れてました。もう一回組もう。
タダでさえ美味しいタミヤのヒトロク式が、誰にも頼まれていないのにさらに美味しくなって新登場!という企業努力とかブランドのプライドみたいなもんが炸裂しているこのアイテム。ギミックもスタイルも本当に惚れ惚れするので、みなさん絶対に組んでください。ところで私はヒトロクが公道を走るときに装備するこの追加風防とミラーのパーツがほしいです(静岡ホビーショー会場への往復時はこれを装備しているので……)。限定アイテムか「これだけは作ろう」かわかりませんが、けっこう魅力的だと思うんですけどね!どうでしょうか(どうでしょうかとは?)。そんじゃまた。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。