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PLAMAXの真希波マリ・イラストリアスは「構造と色彩が交錯した完成品フィギュアのプラモデル」だ。

 8色のプラスチックは「塗装しなくても設定通りになる」という目配せ。真希波マリ・イラストリアスのプラグスーツ姿はいちどマックスファクトリーから塗装済み完成品フィギュアとして発売されましたが、それを解体・再構築して同じ大きさのプラモデルにしたものが本製品です。真希波マリ・イラストリアスのプラモデルであると同時に、原型師の造形や工場での膨大な製造工程が詰め込まれた「かつて存在したフィギュアのプラモデル化」でもあります。

 塗装済み完成品フィギュアでは工員さんが頑張って塗り分けていた数字やこまかな意匠も、プラスチックパーツをくり抜いたり重ねたりして再現できるようになっています。5の数字が出っ張った黒のパーツと、同じ形の穴が開いたパーツを重ねるところなどは、いわば塗装で表現されていたところを立体的な構造に置き換えるプラモデルならではの工夫と言えます。

 そこかしこに現れる、「パーツを重ねてイラストの色彩が蘇る」という過程は「カタチを作ってから塗装でイラストを追いかける」というかつてのプラモデルのありかたと大きく違い、21世紀に大きく変化したところと言えるでしょう(同時に限定発売された「全パーツが真っ白」の”スカルプターズホワイト”はそのふたつのあり方の架け橋になる存在かもしれません)。

 固定ポーズのプラモデルのいいところは手の表情に原型師の意志がハッキリと込められるところだと思います。手のひらと手の甲で2色に分かれた手も、指先の仕草まで繊細に再現されているのがわかります。接着剤を使わなくても組めるスナップフィット式のキットですが、プラスチックが金型から取り出されて冷え固まる過程でごく僅かにパーツが反るため、指先にほんの少し隙間が残るようです。両パーツをピッタリと合わさった状態に固定したければ、流し込みタイプの速乾接着剤を使うのがオススメです。待ち時間もほぼなく、パーツの合わせ目が溶けて汚くなることもありません。

 髪の毛の造形には10パーツを費やしていて、プラスチックという硬い素材でありながらも柔らかい毛の流れがうまく表現されています。先端の尖り具合も相当なものなので、取り扱いは要注意。これだけ繊細な毛の流れなので(顔まわりは目が勝手にじっくりと見てしまう部分でもあるため)パーツを切った跡が結構目立ちます。デザインナイフで注意深く切った跡を削り落とし、最後に柔らかいヤスリでキレイに曲面を整えると見違える仕上がりになります。

▲ふたつ結びの先でバラけた細い毛束も完成品フィギュアに引けを取らない再現度!

 想定されたポーズが歪みなく組めるよう、体幹には黒くて大きなフレーム状のパーツが仕込まれる設計です。ただフレームになっているだけでなく、プラグスーツのあちらこちらに見える黒い部分は外に露出するよううまく内外の役割を両立しているのがみどころです。手首の丸いパーツは設定画を見ると凹んだところにオレンジの差し色が入っています。オレンジの水性塗料を流し込んでから、出っ張ったところをキッチンマジックリンで拭き取ればキレイに仕上げられるはずです。

 外装のピンク部分はかなり大振りなパーツの組み合わせで、とくに下半身はダイナミックな組み味で形になっていきます。パーツ同士のハメ合わせがややゆるく感じられるところ、ピッタリと閉じてほしいところが少々ルーズに感じられるところもありますが、このキットに限らず(あとでバラすことさえ考えなければ)接着剤を併用することで馴染ませながらピッタリと組み上げられます。「自分はスナップフィットモデルしか組まないから……」という人も、この機会にぜひ流し込みタイプの接着剤(速乾タイプ)と仲良くしてください。組み立ての確実さ、スムーズさを助けてくれます。

 海洋堂の2号機(ザ・ビースト!)と合わせて飾ると、どちらも固定ポーズで意志のこもった造形であることになんだか興奮します。かたや色分けなしの彫刻追求型、かたやキャラクターのデザインに忠実な色分け追求型。遊び方はそれぞれ、どちらも「そのままでもカッコいい!」「その先になにをしようか?」の両方の可能性を湛えたプラモデルとして存在感を放っています。

ひこ太郎
ひこ太郎

1984年生まれのプラスチックモデルラヴァー。ジャンルを問わずなんでも買うしなんでも作ってみる毎日ですが、お酒を飲んだり餃子を探してウロウロするのも大好きです。

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