ほぼ無敵の性能を誇るドミニクのダッジチャージャーと、脇を固める日本のスポーツカーたち。映画『ワイルド・スピード』シリーズに登場した綺羅星のような日本車は、いまや作品の成功のおかげで「JDM(Japanese domestic market)」というひとつのジャンルとしてアメリカのクルマ愛好家たちの羨望の的となっています。わけても、ブライアン・オコナー(演ずるのは2013に惜しくも命を落としたポール・ウォーカー)の最初のマシン、80スープラの姿は、我々日本人にとってもきわめてアイコニックな存在です。
シリーズ最初の『The Fast and the Furious』でブライアンが駆る三菱エクリプスと、衝撃的なラストシーンを見せてくれるスープラ。いま店頭に並んでいるamtのプラモデルは、一枚のクロームメッキされたランナー(そこにはNOSタンクが彫刻されています)を除いて、すべてが元気いっぱいの眩しいイエローグリーンで彩られています。たとえばダッシュボードも、NOSシステムを起動するためのボタンが彫刻されたハンドルも、なんならエンジンブロックに至るまで。ボンネットに4つの開口部を持つTRDのエアロボンネットフードだって、劇中車そのままです。
かつて何度か『The Fast and the Furious』のタイトルをパッケージに印刷されて棚に積まれたこのスープラですが、大事なのはそのスケール。日本や欧州のカーモデルでは一般的な「1/24」ではなく、アメリカのカーモデルで生み出され育まれた「1/25」が採用されています。クルマの模型をすばやく、正確に作るために考えられたこのスケールで、日本車が模型になっている意味。それはただ単に人気のあるスープラを立体化しているだけでなく、宿敵であり永遠の友であるドミニクのチャージャーの横に並べられるための縮尺なのです。ガンダムが1/125で、シャア専用ザクが1/144だったら、なんだか気持ち悪いでしょう?
日本で生まれ、海を渡り英雄となったスープラ。アメリカで生まれ、アメリカの魂としていまだ崇められ、不敗のままシリーズの主役を張り続けるダッジチャージャー。両者がロングビーチの踏切の前でアクセルを吹かし合うあのシーンは、1/25スケールでしか再現できないのです。
「スープラがほしけりゃ、国産の1/24キットがあるじゃないか」という気持ちで箱を開け、まじまじと細部を眺め、「ああ、これは超精密で正しいスケールのキャラクターモデルなんだ!」と気づく瞬間。ほんの少しのスケールの違い故に、お手持ちの国産メーカーのカーモデルと並べるのは気がひけるかもしれません。でもでも、我らがスープラが彼の地でその強さを認められ、現地のルール、現地のリーグで大活躍しているのを眺めるようで、とても嬉しいじゃないですか。