薄く消え入りそうな「©NTV MAX.F ’86」という刻印。テレビアニメ『機甲界ガリアン』に続いて展開されたOVA『機甲界ガリアン 鉄の紋章』から、鉄巨神というキャラクターがソフトビニールキットとして発売されたのが1986年。マックスファクトリーは当時、「手で作った原型を忠実に(しかも安価に)複製できる方法」として盛んにソフトビニール製キットをリリースしていました。時は流れて2023年。ここにあるのは「当時のソフトビニールキットと原型を同じくするプラモデル」です。
固定ポーズ、単色のプラモデルですが、だからこそ当時のソフトビニールキットでしか得られない栄養が壊れることなく封じ込められています。パテを捏ね、ナイフやヤスリで削り出したスタッフたちの意思が3Dスキャンされ、現代のデジタルデータで動く機械によってプラモデルの金型へと転写されています。表面のザラザラした鋳造肌の質感もバッチリ。
胴体背面のパーツを見れば、硬質な可動ロボットプラモではまず見られない「ひねり」がそのまま造形されていることがわかります。見栄を切ったポーズで描かれたイラストをそのまま立体表現に置き換えるときに、関節を入れて各所を動かすのとは違ったアプローチです。当時はキットの制作と並行してパッケージイラストが描かれたため、「完成品とパッケージのポーズが違うじゃん」という泣き笑いエピソードもあったようですが、今回は原型のテイストをそのままに、往時のパッケージイラストに合わせたポーズで組めるよう一部造形をモディファイしているのだとか。
あんなポーズにもこんなポーズにも!というプラモデルは表情のある手首パーツがいっぱい用意されることもありますが、このプラモデルは「右手に剣、左手に盾」がデフォルト。剣の柄と一体化した手首は力を込めて握っていることが伝わる造形だし、左手は盾の把手と一体化しているから「誰が組んでもイラストのポーズがバッチリ決まる」というのがアドなんです。ロボットにポーズつけるの、難しいからね。
最初にお見せした当時の版権表記(ソフトビニール製パーツの表面に刻印されていたもの)は胸の装甲で隠れます。完成すればイマドキのシャープでかっこいいプラモデル。しかし、組んだアナタは目撃者となるのです。およそ40年の時を超え、圧倒的な技術の進歩がもたらしたソフトビニールからプラスチックへの華麗な跳躍。歴史と素材を飛び越え、鉄巨神は圧倒的な組みやすさと確かな造形を携えながら、あなたのところへ届きます。