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ステゴサウルスという哲学/プラノサウルスで体感する、発見と復元の旅。

▲ステゴサウルス属は今のところ2種が確認されています。バンダイスピリッツのプラノサウルスのステゴサウルスは清々しいほどのステゴサウルス・ステノプスで、スミソニアン所蔵・展示のUSNM 4934という標本そのものの形をしています。

 春です。3月も下旬ということで、上野の国立科学博物館では『恐竜博2023』をやっています。恐竜は夏の季語ですが、春の季語でもあるのです。嘘です。

 そうこうしているうちにプラノサウルスシリーズの第3弾、ステゴサウルスが発売されました。前作のティラノサウルス・トリケラトプスの骨格部分の造型はLIMEX製の骨格プラモデル(もっと言えば『小学8年生』の付録キット)をブラッシュアップしたものでしたが、ステゴサウルスは完全新規造型となっています。

バンダイスピリッツ プラノサウルスシリーズ

▲細かなパーツがかなりありますが、弾性が強めなので破損のリスクは最小限。タッチゲートの採用に加え、組み立てに関してもちびっこへの配慮がうかがえます。

 ステゴサウルスはたいがいの方がご存じかと思いますが、やたら頭が小さいのが特徴です。小顔と言えば聞こえはいいですが、体のサイズの割に脳がだいぶ小さいということで、色々と不名誉な形で言及されることの多い恐竜でもあります。

▲キットにスケール表記はありませんが、直接のモチーフになった標本USNM 4934のちょうど1/40のサイズのようです。頭骨の上下のひしゃげ具合まで再現してくる気合の入りようです。

 ネタにされるほど小さな脳の持ち主とはいえ、ステゴサウルスは現在のアメリカとポルトガルで少なくとも350万年は繫栄していたようです。必要十分なスペックを備えた脳だったことには疑いがなく、他方で我々人類は持て余し気味の脳で哲学的なテーマにぶちあたりがちです。自然科学を極める気概のある人類は哲学博士号をもらえることがありますが、筆者はその前に野生に還ってしまいました。学問分野の違いはありますが、平賀=キートン・太一とおそろいです。

▲デフォルメ少なめの骨格ができあがりました。同シリーズのトリケラトプスと比較すると色々な発見があります。

 ステゴサウルス最大の見せ場である背中の骨板(生きている時は角質が被さっています)は、“恐竜ビルド”(肉付け)時にはガワとの差し替えになります。骨板は本体の骨格とは独立した骨なので、生きていた時の配置や角度については19世紀からずっと議論が続いています。このステゴサウルスはバンダイのプラモデルなのでストレスなく骨板が組み上がりますが、基部からニッパーで切り飛ばし、自分でもっともらしい位置関係を探ることもできます。復元とはそういうものですし、プラモデルもそういう側面はありそうです。

▲繊細な鱗のモールドの中に、目立つボツボツがあります。トリケラトプスのボツボツはただの大きなウロコですが、ステゴサウルスのボツボツは中に小さな骨が入っています。

 とりあえず組み立てを優先するのであれば、あっという間にティターンズカラーのステゴサウルスが机の上に鎮座します。付属のシールもオレンジ色なのでなおのことティターンズっぽさがあります。ステゴサウルスは現代のサバンナのような環境で暮らしていたらしいので、埃っぽい色で塗るのもよさそうです。

▲肉付けしてもデフォルメは少なめです。対決要員でアロサウルスが欲しいところですが、さて。

 ティラノサウルス、トリケラトプスと、“バンダイの考える恐竜のキャラクター性”を押し出してきたプラノサウルスシリーズでしたが、第3弾にしていきなり“実在の化石標本”の形状の再現に重きを置いたキットを繰り出してきました。“実在するモチーフのキャラクター性”という哲学的なテーマとぶつかり合い、葛藤するバンダイの姿が目に浮かびます。

 ステゴサウルス本人は哲学と縁がなかったはずですが、我々はプラモデルを通して哲学ができる生き物です。「つくる。だから発見がある!」とはプラノサウルスのパッケージにある言葉ですが、発見の先には“復元”という哲学が待っています。みなさんも、ぜひ。

G.Masukawa a.k.a.らえらぷす
G.Masukawa a.k.a.らえらぷす

1994年生まれ。恐竜の化石から骨格図を描き起こしてごはんを食べています。著書に「新・恐竜骨格図集」、イラスト展示制作に「恐竜博2023」、「ポケモン化石博物館」ほか多数。

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