クフ王、カフラー王、メンカウラー王。ギザの三大ピラミッドですね。ステルス戦闘機はギザギザしてるんですよいろんなところが。理屈を説明すると難しいのですが、電波を飛ばして反射してきたのを探知するのがレーダー。それを欺くための形。電波を明後日の方に反射すれば、レーダーは「跳ね返ってきた電波がイマイチ少ないな……カラスかな」くらいに勘違いするという寸法です。たとえば上の写真のエンジンノズルも片方が3大ピラミッドで、片方はノコギリみたいになってますよね。
タミヤのF-35Aのエンジンノズルは3大ピラミッドを表裏張り合わせて基部となるリングにはめ込んでいきましょうという設計なんですが、これまた精度がちょっと段違い。ただはめ込むだけなら接着剤がなくても「ギュッ……」と位置が決まり、パーツはバラバラにならない。かと言ってなんか渋すぎて途中で止まったり歪んだりもしない。お互いの絶妙な抵抗感だけでギザギザがピタリと円弧を描き、本当に美しいエンジンノズルができます。
他のところでは「ほんの少しだけユルめに作っておいたから、接着しながらうまいこと位置合わせてね!」というのをやりながら、ここでいきなり「いや、ウチはスナップフィットもできますよ。やろうと思えばできるんですよ。いつでも」みたいな顔をしてくるのがマジですごい。テスト勉強してないって言いながら高得点出してくる奴!いや、タミヤを擬人化するとめっちゃテスト勉強はしていそうなんですけども……。
もう一個「これ寸法公差ほぼゼロで作ってるじゃないですか……」って恐怖したのがこのクリアーパーツですよ。機体表面に設けられた凹部にセンサー類の透明な窓を貼り付けるんですけど、「フワッと入るようにしといたんで、あとは接着剤でうまいこと位置決めしてください」くらいの精度でもいいでしょうに、もうこればっかりはギリギリの寸法で作ってある。
ゲートをキレイに切り離して、ほんの少し残った痕跡を丁寧に削り落として、そっと胴体パーツに置くと「ビタァ!」と合ってもう微塵も動かない。ちょっとでもクリアーパーツのほうが大きければ「組めない」になっちゃうし、ちょっとでも小さければ「ガコガコ動いて位置が決まらない」となってしまうので、このピッタリ加減をコントロールするのって(設計だけじゃなくて)プラスチックの性質を知り抜いているからこそできるんですよね……。
ということでこのF-35A、全体的に「ふわっとさせておきました」というところと「ビッタビタに追い込んでおきました」というところが(説明書には書かれていないんだけど)確実に共存しています。なので、パーツを漫然と切り離して「ちょっとだけゲート跡が残ってるけどまあいいか☆」みたいな感じで組んでいると突然隙間や段差ができて面食らうことも。至高の仕事に応えるためにも、みなさん良いニッパー、良いナイフ、良いヤスリを用意して「設計された通りのパーツの形」をしっかりと組み上げていきましょう。やればやっただけ、ピタッと合う快楽が待ってくれています。