「俺のプラモ、なんだかうまくいかん」「どうして雑誌に載ってるのと同じようにならないんだろう」という気持ちのせいで、「達人はきっと理解不能な技を持っているに違いない」「あの人は特殊なものを使っているから」「あの人はセンスがいいから」とお手本を遠ざけてしまったこと、ありませんか?今回のスケールアヴィエーションから読み取れることはただひとつ。レシピ通りに作れ。これに尽きます。
『リュウジのバズレシピ』でおなじみの料理研究家、リュウジさんを観察していると、レシピそのものよりバズっていることがあるんですよね。それが「レシピ通りに作れ」というフレーズ。バズるのと美味い不味いは直接関係がないとしても、ちゃんと研究してたどり着いた料理の材料と方法をなぜか自己流にアレンジして「うまくいかない!」と嘆いている一般人を見つけては、「レシピ通りに作れ!」と喝を入れている。オレは今回のスケールアヴィエーションを読んで(そして付録のDVDを見て)その挿話を思い出したんですよ。
スケールアヴィエーションにたびたび登場している林周市というモデラーは、飛行機の汚し塗装一点突破で名声を勝ち取った人。とにかく多作で、どんどん表現力が増していて、見ているだけでも楽しい。そんな彼が実際はどんなふうに汚し塗装をしているのか?というのを写真と文字と映像で届けているのが今回の同誌なんですが、その手法をひとつひとつ分解してみると、まったくもって特殊なものは使っていないし、人知を超えた職人芸みたいなものも出てこない。その「普通さ」は、ワンダフルな完成品からは想像できないほどなんすよ。
じゃあなんでこんなに実感溢れる汚し表現ができるのか。それは、どのタイミングで何を使うか、なにがいい塩梅なのか、やりすぎたらどうやって修正するのか、そしてどこを「セーブポイント」にすればいいのか……というのが全部超明確だからだということに気付かされます。Aの上にBを乗せるとあんまり良くないことになる、とか、ここでセーブしておかないと次の面でミスったら全部やり直しになる……というのはプラモデル作りあるあるなんですが、これを徹底的に真面目に、神業抜きで、実直に積み上げているんだ……という感動があります。
よくこういう手引が公開されると「参考にします!」「勉強になります!」という声が上がるのを目にしますが、やるべきことは完全にひとつ。レシピ通りにやる。プラモ用の塗料にもいろんな種類があるけど、「タミヤのこれをこのタイミングで使う」と達人が言ってるんだから、まずはそれをそのままやりましょう。「他の会社のこれでも色が乗るからいいっしょ」とアレンジすると、たちまち「なにが失敗だったのか」がわからなくなります。タイガー・ウッズと同じ装備を揃えてゴルフをするのに比べたら、プラモデル用品はとっても安く、手に入りやすいものばかり。まずは同じツールとマテリアルを揃えて、DVDを見ながらそのとおりにやりましょう。きっと新しい感動があるはずです。