ズドン。この写真を見た時点で「あ、このプラモは手首に対して真剣(マジ)なんだ!」と気がつくよね。ただ上下に別れる金型ではなく、さらに横方向からも造形を加えることのできるスライド金型を使っているじゃありませんか。ロボットのプラモデルでは拳もなるべく簡素な分割でパーツにしようとするため、親指の造形が犠牲になることが多いんだけど、MODEROIDがついに手掛けた『ブレンパワード』のメカ、ヒメブレンの武器持ち手の造形をみると、ここにコダワリを爆発させている。嬉しい。
武器持ち手だけじゃない。握りこぶしと平手に加えて、指にもっと色気のある表情を付けた「見栄平手」とでも言うべきパーツもそれぞれ左右ぶんが用意されている。じつに8種類の手のパーツ。それぞれにアンチボディらしい(油圧とかパルスとかで動いている感じとは全く違う、永野護デザインの生体エネルギーメカを感じさせる)ディテールが入っていて、見ているだけでも楽しいのだ。
ちなみにこのプラモ、スミ入れがめっぽう楽しい。タミヤの墨入れ塗料(ダークブラウン)を取り出し、機体表面に入った凹みにこれをサラサラと流し込んでいく。
スミ入れ塗料はその名の通り凹んだところにスミがシャーッと入っていくように、あらかじめ流動性の高い状態に整えてある。キャップに付いた筆で表面の彫刻の上を撫でるだけで、影になる色が入るという寸法。かなり精神のリラックス効果がある行為なので、日々の暮らしに疲れてクサクサしている人にマジオススメの娯楽である。
スミ入れ塗料に含まれるエナメル溶剤は、プラスチックに力がかかった状態で塗りつけるとパーツが割れてしまうこともある。なので、こうやってパーツが枝にくっついた状態でスミ入れをするのが超大事。はみ出したところはよく拭いて乾燥させてからパーツを切り出し、組み付けていくのがオススメだ。それもこれも、最初からプラスチックに色がついているロボットプラモならではの楽しみじゃな。グフフ。
白い部分がパーツ状態で塗装してある武装と手首を合体。スミが入って立体感を増した握り手とのコンビネーションは、このプラモデルのいちばんの大トロと言っていい。ここを鑑賞するために買ってもいいのよ!そんじゃまた。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。