プラモデルで味わう日本の配色/サイバーパンクと鎌倉時代の鎧武者。

▲PLAMAXの「鎌倉時代の鎧武者」を作っています。

 実際に鎧を着たモデル(古武術家!)を3Dスキャンして作られたプラモデルなので、顔パーツからは叫び声が聞こえるし、縅(おどし:甲冑の平たい部分)は波打つように動いているし、直垂(ひたたれ:下に着ている装束)はシワの凹凸が深くうねるし衣擦れの音が聞こえる。プラスチックなのに。

 さて、色を塗りたい。説明書には各所に「自由な色で塗装してください。」との記載があります。優しいですね。しかし、自由にしてくださいと唐突に言われると、大人は逆に困ってしまう。自由って何だっけ。例えば小さいお子さんに塗り絵を自由に塗ってねと10色クレヨンを渡せば目についた好きな色からギュっと握りしめグリグリ塗り絵を楽しむなんて造作もないことでしょう。それなのに、それなのに私は塗料棚に100色程度では済まない塗料の山と暫くにらめっこしても手は動かないし一向に私が塗りたい色が何なのか分らない。

 「プラモデルは自由」とはよく言うけれども、自由って何だっけ。そうだ、昔ギターを弾いて学んだことだ。音楽理論は、コードと協和したスケールでアドリブを弾くのに役立つし、且つそれを無視して逸脱し、不協和なスケールアウト音を弾くのにも役立つ。つまり、遊びや表現の上での自由とは、ある規則・セオリーから逸脱すること、もしくは規則・セオリー通りに実行すること。この”逸脱する・しないの選択権がある”という事こそが自由なのだ。そして逸脱する(しない)為にはその枠組みを理解することが必要不可欠だ。学ぼう。本を読もう。

 とても良い本を見つけました。城一夫著『日本の配色事典』です。私たちはときに複数色の組み合わせを「美しい」とか「調和している」とか判別しますが、それは時代によって、身分によって、流行り廃りがあります。そんな日本の色彩史を、日本古代から江戸時代まで総括したと言える一冊です。

 そして鎌倉時代を代表する配色文化として取り上げられているのは、武士の鎧の色彩感覚。その縅の配色パターンが50通り近く紹介されています。

▲“戦場は、生死をかけた武士たちが綺羅を装い、その姿を敵味方に知らせることによって自己のアイデンティティを表現する、華やかな舞台であった。”(城一夫『日本の配色事典』より)

 中でも目を惹かれたのは上の写真の「妻取浅葱匂威(つまどりあさぎにおいおどし)」というパターン。「浅葱色」(緑がかった藍染色)のグラデーションに黄色と白がビビッドにマッチしています。そしてこの浅葱色、江戸時代で流行し、それが廃れた後も田舎侍が浅葱色の裏地を使った羽織を着続けていたので「浅葱裏」という言葉が、”野暮天侍”の代名詞となったとの事。へぇ……。浅葱裏、黄色、白……つい先日見た、月までぶっ飛ぶスーパーソニックハイアクションアニメこと、『サイバーパンク:エッジランナーズ』の主人公、パンクに下剋上していくデイビッド君のジャケットの配色じゃん……!?急転直下、この3色をメインで、ド派手なパンク武士に仕上げたいと思ったのでござる。サイバーパンク武士道とは死ぬ事と見つけたり。

▲まず、サーフェイサー(下地塗料)を使って全体を白にします。

 赤と黒の整形色に一発目からホワイトサフを吹いたら色が透過してあからさまにピンク&グレーの立像になってしまった!ので、グレーサフを全体に吹き直してから、もう一度ホワイトサフを吹いたのが上の写真。努力の白。努力ホワイトです。

▲白いキャンバスが出来たら、水性塗料の筆塗りで染め上げていきます。

 私が使ったのはシタデルコントラストのインペリアルフィスト。パキッとした黄色で、くぼんだ部分には程よいオレンジの影色が付いて最高。筆はぺんてるのネオセーブル。塗料をよく含むのに、穂先がシャープになるので使い勝手がよいです。安いし。オススメ。

▲食事を忘れるほど楽しい。黄色いジャケットのアルバム、INUの『メシ喰うな!』を聴きながら塗っているから。

 塗る色の指針さえ決まってしまえば、あとは速いです。塗れば塗るほど見たことの無い色彩の武士が出来上がっていくので、手が止まりません。まるで心地の良いコード進行の上で、アドリブを弾き倒している気分!私は今、自由に色を塗っている!

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ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。