まるで魔法陣のようなこの板。じつは「砲床」と呼ばれる物体で、めちゃくちゃでっかい大砲を乗っけてグルグル回しても地面が崩れないようにする基礎みたいなもんです。この上に乗るのが日本陸軍 二十八糎榴弾砲。ひとむかし前だと『坂の上の雲』とかを注意深く見ているちょっとしたマニアが知っている兵器だったかもしれませんが、いまは『ゴールデンカムイ』のおかげで日本の全国民が日露戦争マニアと化したため、「知ってる〜旅順攻囲戦とか奉天会戦でしょ〜!」とチヤホヤされる存在になりました。ほんとに?あたしゃゴールデンカムイが好きだよ……。
いや、三笠を作ったらなんかとても日露戦争な気分になりまして、いろいろ関連プラモを探したんだけどぜーんぜんない。いま会える日露戦争といえばこいつ。ピットロードの二十八糎榴弾砲なんですね〜。小さな箱ですが中身は大充実。このどうにもならないくらいレトロかつ力強い大砲に砲兵が6人もくっついてくる。挙句の果てに乃木希典将軍のめっちゃ小さいフィギュアも入ってます。乃木希典、プラモになっていたのか……。
いまでこそ大砲は毎分何発みたいなペースでドッカンドッカン弾が出てくるイメージですが、当時はもうそういうスペックじゃない。一発打ったら砲身を水平にして後ろのフタを開けてクレーンで吊り上げた砲弾を人力でよいしょこらしょと押し込んで蓋を閉めて所定の角度にしてからもう一度発射……ってキーボード叩いてるだけでもめんどくさいのにこれを何個も持っていって陣地を構築して日夜バンバカやっていたのですからもう大変です。その「大変そうっぷり」がそのままプラモデルになっているのが偉い。
リベットバリバリの鉄塊。ちょっと昔の鉄橋を見るような想いに駆られます。説明書もちゃんと「いま組んでいるパーツがなんなのか」を文字で書いてくれているので、シンプルな構造だけど周りでたくさんの人がわちゃわちゃ仕事していたんだな……ということがめっちゃ伝わってきます。これは面白い。大砲って別に歩いたりしないしなんか地味だし……と思っていたオレも、いまやフィギュアの服装を見るだけで「これは……94話の鶴見!?」「えっ、1/72だから杉元ってことにすればよくない!?」みたいなポーズに大興奮。組んで並べて、あなたの机にあの激戦を蘇らせましょう。そんじゃまた。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。