ピックアップ・タミヤMMフィギュア! これぞ「日本兵プラモ」の大傑作!! 終戦から30年の生々しさを味わう。

▲どう見ても日本兵! 超生々しい!

 太平洋戦争終戦30周年というタイミングは、ちょうど2021年の我々からすれば湾岸戦争くらいの時間的距離。そんな距離感だった時代にタミヤが発売した「日本陸軍歩兵セット」は、往時の日本兵の質感を生々しく留めた歴史的プラモデルです。

 「日本陸軍歩兵セット」が発売されたのは、1976年の9月のことです。1975年の12月に97式中戦車が発売され、さらに1977年3月には一式砲戦車を発売していることから、終戦30周年というタイミングでMMでも日本軍アイテムを集中して扱おうという機運があったことが伺えます。当時はまだまだ従軍経験を持つ人が健在だったこともあってか、この日本陸軍歩兵セットは他国の兵士のキットとは一味違う生々しい質感のキットになっております。

▲全員の顔つきが「昔の日本人」という感じですごくいい
▲箱の裏には階級章などの解説が

 箱はMMのフィギュアキットでおなじみの正方形サイズのもの。そしてボックスアートはまぎれもなく日本兵! カーキというよりはカラシ色みたいな防暑略衣袴の色味にシビれますね。兵隊の顔立ちも、ちゃんと「昭和の日本人」という感じ。手前で軍刀を持っているのが将校で、他の3人は兵士ということになります。


▲フィギュアのランナーと装備品のランナーに分かれているという、定番の構成
▲軍刀がついてるプラモ、珍しいよね……

▲この帽垂れのペラペラ感!!

▲袖の縁の薄さ、そして腕時計にも注目

 パーツも日本軍ならではのものばかり。まず目立つのが軍刀。柄巻きのモールドのキレが素晴らしいですね。そしてこのキットの凄まじい点が防暑襦袢や帽垂れなどのペラペラ感の表現。帽子や襦袢の袖の縁は他のキットでは見られないほど薄く成型されており、生地の質感さえ伝わってきそうなくらい。ズボンのゴワゴワ感や律儀にモールドされた腕時計など、兵士が身につけていたアイテムが非常に高い解像度で立体化されていることに驚きます。例えば北アフリカのイギリス兵とか、当時のタミヤは他にも半袖のフィギュアを製品化しているんですが、腕時計まではモールドされてないんですよね。このあたりは、自国の兵士のフィギュアだからできたことだろうと思います。

▲もう体型から日本人だもんな、これ
▲将校は乗馬用ブーツを履いております
▲三八式、なっがいな~~~!!
▲この人が持ってるのは、八九式榴弾筒という手持ちの軽迫撃砲です

 で、組み立てるとこの感じ。胴体と手足の長さのバランスや頭の大きさ、そして顔立ちに至るまで全てが完璧に日本兵! こうして見ると三八式小銃ってめちゃくちゃ長いですねえ。銃剣なんかつけたら、もうほとんど槍。米軍のヘルメットともまた違う、微妙な曲面の鉄兜にしてもほぼ完璧な再現度です。

 そしてこの日本陸軍歩兵セットの特徴がポージング。というのも、当時のタミヤMMのフィギュア4体セットは「立射・膝射・手榴弾投擲・歩行」みたいな感じで、汎用性があって派手な戦闘中のポーズがバラバラに入っていることが多かったのです(例外は多々ありますが……)。しかしこの日本陸軍歩兵セットは、全員腰をかがめてうずくまったようなポーズ。突撃前の緊張感が漂ってくるような、ヒリヒリしたポージングになっております。能天気に大活躍している汎用的ポーズにもせず、わーっと走っているベタな突撃ポーズにもせず、全員がうずくまっている焦れるような緊迫した状況をチョイスした……。このポーズを選ぶまでには色々あったんだろうな……と1976年のタミヤ社内についてつい想像してしまいます。

▲全員姿勢が低いんだよな

 というわけで、終戦30年という時期の生々しさと「日本兵をプラモデルにする」ことにタミヤがどう応えたのかを感じられる一作となっております。もう45年も前のプラモデルではありますが、その時期に作られたからこそ日本兵の質感が真空パックされたような内容になったとも言えます。海外製の日本兵キットにはない生々しさを味わえる本当に珍しいプラモデル、ぜひ一度手に取ってみてほしい一作です!!

しげる
しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。