四輪駆動車のフロントアクスルとリアアクスル。見た目はほとんど同じで、組んでいるとどっちがどっちだかわからなくなりそうです。でも右側に小さく「F」と「R」の刻印が入っている。こういう気配りのおかげで、今日も僕らは知らない山道を歩くことができます。プラモは制御された冒険だなぁ、制御されすぎてもなんか違うし、まったく五里霧中なのも困る。そういう我々のゼータクな気持ちにどう寄り添ってくれるか。タミヤって偉い!
スコップや斧といった必須の工具(これらをひっくるめてパイオニアツールって言うんだって!)は取付金具に収まった状態で1パーツにまとまっていて、「第二次世界大戦のときも現代も同じようなもんが必要なんだな」というのがビジュアルにわかる。そして取り付け位置が……「そんなところに!?」という場所なので、みなさんも組んでびっくりしてください。
話は飛ぶけど、説明書に描かれたボンネットの上にあるグリル(鎧戸)のパーツを貼るパート。細かい横線を平行にいっぱい描くのが「写実」なんだけど、そこがベタッと重たく見えないように(見ている人が濃いところに気を取られないように)真ん中をあえて白くトバしてあるんですよね。この漫画的表現すごいな……って初めて気がついた。プラモの説明書も、その存在をあくまで主張せず、ふわりとユーザーの横で手取り足取り(でも声を出さずに)一緒に走ってくれるトレーナーのようであるのが凄いね。みたいなことを感じました。
パッケージには幌のくっついたハンヴィーが描かれているけど、パーツをよく見ると案外「付ける/付けない」が選べるから、お好みの形態を選べますね。ドアがないとか、幌がないとか、いろんな順列組み合わせでボリューム感や姿態を自分で決められる。決めているようで、決められているというか、決められていないからこそ、自分で決められるというか。制御された冒険、ここにも。
説明書をよく見ながら、組み立てはここで寸止め!この状態なら、まだ山道のどっちに向かって進んでいけるかを選ぶことができます。ボディ何色に塗ろうかな、幌はどんな質感にしようかな……。キレイに整備された登山道を、注意しながら歩いていろんな景色を見て自分を褒める!振り返ると、ああ登山道を整備してくれている人も凄いな!となったりして、やはりプラモを組み立てるのはすごく楽しいもんです。そんじゃまた。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。