プラモの白バック撮影に、キリリと締まった輪郭が欲しければ「黒レフ」を使うべし。

 SNSの世界では作ったプラモデルをかっこよく撮れないとダメなんだ。どれだけ上手に作れても写真がイマイチだったら誰も見てくれない。残酷だけどこれが世界のルール。

 いい写真を撮るヒントはボックスアートにあります。色彩と明暗のバランス、力強い構図と無駄のないレイアウト。それをお手本に写真を撮ってみるのが何よりも近道になるでしょう。その時に注意しないといけないのは背景の処理です。模型の後ろにカップ麺が写り込んだら台無し。背景の紙がシワシワだったらプラモデルもアウト。ボックスアートをよく見てみよう。たとえばタミヤのホワイトパッケージの美しさ。真っ白で余計なものは存在しないから、メッセージがストレートに伝わってくる。そんな感じで写真が撮れたらいい。

 ちょっと待ってね。覚えておいて欲しいのは、「白い紙を撮っても白く写らない」という写真の罠。カメラは白いところが淡いグレーに写るようにプログラムされています。公園の陽だまりを撮ったら露出オーバーで写真が真っ白に……とならないようにカメラが考えているのです。だからタミヤの白い箱をそのまま写真に撮っても完全な白に写らない。

 背景を白く写すには白い紙だけではダメ。プラモデルを照らすライトとは別にもうひとつ、背景用のライトが必要です。背景の紙は模型からできるだけ離してセット、思いっきり強い光を当てて「背景だけ露出オーバーで白くなる」ように撮る。それでも冒頭の写真のように薄曇りの空の色になるから、写真の現像アプリで調整しましょう。露出を上げつつ白レベルをグイッと上げると背景が白く抜けます。そうやって初めて背景が完全に白い写真になるんだけど、プラモデルのエッジが背景の光でハレーションを起こして、背景の白に輪郭が溶けてしまうこともよくあります。上の写真みたいに。

▲“Madonna and child” c.1525  Michelangelo

 輪郭が白く溶けて悪いのか。世の中にはそういう写真もあります。でも、こんなスケッチを見たことありませんか? ルネッサンスの彫刻家ミケランジェロのデッサンです。鉛筆の線で表現された母親の振り向く姿。身体の動きも見えない背中の丸みも線の運びで暗示されています。輪郭線には重要な意味があるのです。プラモデルだって同じです。白く溶けた写真では伝えられないことです。

 だったら、どうすればいいのか。途方に暮れていると遠くで声が聞こえます。「ホワイトボックスには黒レフを」です。

 この写真、さっきより輪郭がちょっとクッキリしたと思いませんか? 写真を撮る時に黒いレフ板も使ってみました。輪郭線に「黒い光」を当てたのです。

 そもそもレフ板って何?と、そこから始めますが、たとえばポートレイトを撮る時に自然光だけではあごの下が影で黒くなってしまいます。そこで下からも光を反射させる板を使います。これが「レフ板」です。街で撮影するモデルさんの横で、アシスタントが持っている銀色の丸い板を見たとこありますよね。白いのは「白レフ」、銀色のものは「銀レフ」と言います。反対に、光が特定の面に当たらないように……あるいは被写体に黒いものを写り込ませて白く光るハイライトを抑えるための黒い板が「黒レフ」です。

▲いつもキッチンで撮ってることは内緒です

 模型を撮る時も同じです。照明の反対側に白レフ板、ディテールが影で黒く潰れるのを防ぎます。次に「黒い光」を横から当てるつもりで黒レフ板をセットします。するとプラモデルのエッジに黒みが加わり、写真を撮っても輪郭線が背景の白に溶けたりしなくなります。「黒レフ」は100円で買える黒い画用紙で構いません。

 黒レフを使った写真は輪郭がシャープになって、立体的に見えてきます。それが秒速でSNSのタイムラインが流れていく時のフックになります。

 だから何が違うの? と思うかもしれない。当然です。ひとつのアイディアで出来ることなんて、そのくらいの小さな話です。写真に正解はない。あるのは「やるかやらないか」。 君がその道の先で見たことのない風景に出会いたいのなら。 Hasta la vista, baby!(地獄で会おうぜ、ベイビー)

hn-nh@ミカンセーキ
hn-nh@ミカンセーキ

1968年生まれの会社役員。プラモよりは三度の飯が好き。模型を作る以上にリサーチにのめり込むタイプで完成品は少ない。ブログも見てね。