最愛の飛行機が最新のプラモデルになった日、エアフィックスの1/48バッカニア。

 このむっちりとした優美な曲面。ブラックバーン・バッカニアという私がこの世でいちばん好きな飛行機の、胴体中央部だ。いちばん好きな飛行機だから、これまで売られてきたプラモデルは全部組んだ。どれも愛おしく、どれもガッカリさせてくれた。複雑に絡み合う連続した曲面と、プラモデルのパキッとした分割線はどうにも相性が悪い。3年前にエアフィックスから発売された1/72モデルは8つ買った。でも、心のなかにずっとあったのは「もっと大きいバッカニアがほしい」というただひとつの欲求だった。

 箱を開けていちばん驚いたのは、エアフィックスのプラモデル特有のあのペールブルーのプラスチックではなかったことだ。無彩色の濃いグレーで、どうにも寂しい感じがする。しかし、じっくり見ていくと無彩色ゆえに硬質でソリッドな気迫が感じられる。

 パーツ分割は同社の1/72モデルとほとんど同じで、そのままスケールアップしたような構成だ。大きくなったぶん、ひとつひとつのディテールは相対的にこまかく見えるし、リベットやパネルラインもかなり詳細になっている。それだけではなく、世界中のバッカニアファン(スタイルもディテールもしっかりと表現された「決定版」を欲し続けて長年の怨念が煮詰まり、いつか最強のキットが発売されたら作り倒してやる!と願う英国機マニア)に対して最高のおもてなしを届けたいという意思がそこかしこに見られる。

 たとえば胴体左肩のアクセスパネル。切り離して開いた状態で組むことができる。中には配管が彫刻されたエンジン。点検中の風景を見せるためのギミックだが、工作をより確実なものとするために「パネルの開口部が正しいカタチと大きさになっているか」を確かめるための治具まで入っている。このパーツは塗装時にエンジンまで機体色で塗られてしまうのを防ぐためのマスクにもなっているのだ。偉すぎない!?

 バッカニアの写真を見るとかなりの頻度で目にするインテークとノズルの赤いカバー。こうしたオプションはいわゆる「ディテールアップパーツ」としてサードパーティーのメーカーが製品化することが多いのだが、エアフィックスは最初からこれをランナーに配置している。「あなたの作りたいように作れる日がようやく来たな!おれも嬉しいぜ」いう設計マンの声が聴こえてくるようだ。

 バッカニアを作る上で毎度アタマを悩ませるのがインテークリップ(空気取り入れ口の前端)がギラッと光る金属むき出しになっていること。ここを楽してうまく塗り分ける方法なかなか思いつかなかったのだが、本キットでは別パーツになっている。リングを銀色に塗ってからポンと貼れば、実機と同じだ。とにかくこのキット、ちゃんと塗装して作る人のことを考えた分割になっている。

 武装の並んだランナーにはトビウオの群れ。これはミサイルの翼を一枚ずつ角度を気にしながら貼らなくてもいいようにするソリューションだ。ミサイル本体の円筒を組んでから、4枚ずつ一体になった翼パーツをパシパシと嵌めていけば良い。1/72でこの構成を実現するのは少々難しいかもしれないが、1/48スケールだからこそ思いつき、実現できるアイディアだなと思う。

 エアフィックス本社にオーダーを入れて待つこと幾星霜。我が家には3機の1/48バッカニアが飛来した。刺し身で食べて、主翼を折りたたんだ状態で作って、主翼を展張した状態でも作ろう。最愛のメカが、最高のプラモになった日。今日は私のプラモ人生にとって、本当に特別な日なのだ。

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からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。