先日旅行中に、かつての青函連絡船を博物館として改装した「青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸」を見に行った。なかでも目を惹いたのはその煙突。白い卵のような曲面を鮮やかな黄色がスライスし、その中央には「JNR」をシャープに抽象化した赤い国鉄ロゴマーク。オシャレじゃないですか。
近くまで行って眺めたい……と思ったけれども、雨で甲板は立ち入り禁止とのこと。仕方が無いので帰路につき、ちょこちょこ振り返りながら遠目に写真を撮る。お気に入りの50mmの単焦点で構図を探すその時間は、甲板に行って視界に入りきらないほど間近で見るよりも、至福のひとときだったのかもしれない。
さて、これは気づいたら帰りの新幹線内で発注していた、フジミ「1/200 戦艦大和 中央構造」のランナー群です。戦艦大和の甲板から上、しかも煙突周りだけを切り取って立体化した、かなり思い切りの良いキット。
ほかにも「艦橋」や「主砲」などが商品化されていて、これらを組み合わせると甲板から上の主要機関が出現するというもの。とりあえず全部買ってみたのですが、まずはお目当ての中央構造を作ってみます。
ポピュラーな艦船模型が1/700とか1/350というスケールなので、それと比べると1/200はさすがにデカい。ハシゴや鉄扉の彫刻が、充分に1/200サイズの人間を想起させてくれます。それを念頭に組み立てを進めていけば、戦艦大和の各部品がどれだけ巨大か”解って”しまうのです。
大和の煙突は、外周にも小さな蒸気管(といってもデカイ)が数本立ち上がっていて、そのまた周囲をブーツの様な防熱外板で囲っているのですが、上の写真はそのブーツのスキマに雨が吹き込まないように庇(ひさし)を取り付けたところ。
この庇は煙突の外周に沿ってカーブし、内側にはパイプを通す為の半円状の欠き込みが数カ所、更に下部には庇と直交するように三角支持材まで取り付けてある複雑な形状で、それぞれの曲面が魔法のようにピタ……ッ!とハマるのです。これはまさにプラモ三大法則のひとつ「大胆なパーツ割りで充分に嵌合が調整されたプラモは、魔法と見分けがつかない。」を体現したもの……!少量の流し込み接着剤をツーッと流せば接着も一発でキマり、快感です。
上から覗くと雨避け格子のスキマから、12系統に分かれた煙突内部の仕切り板が見え隠れする重層的な形状が確認できます。煙突をこのアングルで堪能できるというのは、まさに模型ならでは。
煙突はモナカ割りですが、合わせ目は全く気になりません。梯子やマストなど、小さく細長いパーツも位置がスッと決まります。ランナーと間違えて切断してしまいそうな危ういパーツが散見されたり、小さな蒸気管端部の接着あたりは若干難しい。でもそれ以上にパーツの精度が全体的にハイレベルで、キットとしてかなり好印象です。
このサイズの小さな機銃(といってもデカい)も、スライド金型で銃口がちゃんと表現されています。そして特にスゴイと思ったのは探照灯のクリアパーツ。平凹レンズ状に成形されていて、組み立てるとクリアパーツの表面だけでなく内部でも光を反射するので、見ていてとてもうっとりします。
複数の円筒型の砲台が垂直に立ち上がる中、ひとつだけピサの斜塔の様に妙な角度のついた煙突。それを横からスパッと日本刀でまるごとぶった斬ったような、庇の太い影のライン。完成してから私のフォーカスはずっとそこに張り付きっぱなしでした。このプラモデルはまさに標準画角のレンズで風景を切り取ったような、戦艦大和のベストショットです。