戦艦の顔とも言える、「艦橋」。第二次世界大戦末期、肥大化し過ぎてしまった日本戦艦の艦橋を、スマートに近代化したのが戦艦大和でした。そんな戦艦大和の艦橋部分だけを切り取ったプラモデルがあります。フジミ模型『戦艦大和 艦橋』です。以前作った煙突部分のプラモ『中央構造』とは少し違い、私に予期せぬ眺めを見せてくれたプラモデルでした。
艦橋は顔だと言いましたが、その顔の「目」にあたるのが、大和においてはこの遮風装置(前方からの風や爆風を上方に誘導、エアカーテンを形成して無風空間を生み出すらしい。すごい!)のスリットだ私は認識しています。人形は目が命。このピリッとシャープなエッジの造形がワンポイントあるだけで、全体の印象がかなり引き締まる感じがします。
防空指揮所と第一艦橋内部には、双眼望遠鏡や測距儀など沢山の備品を仕込みます。レンズの前玉を外側に向けてセット、セット……。地味な作業の積み重ねですが、みるみると密度が高くなって育っていく様が地味に楽しいんですよ。
ただ、スナップフィットを謳ったこのキットは双眼鏡のようにかなり小さい部品までピンを穴にパチっとはめ込む仕様で、何箇所か結構キツい部分があります。ピンセットでは押し込めないし、指で押し込むのも難しいので、ピンを切り飛ばして接着したのですが、こういった箇所は単純に接着剤を使う仕様が嬉しかったなと思います。
曲面的な外壁に直線的な階段を取り付けていきますが、それが面白いようにピターッとハマってくれます。階段や踊り場は可能な限り一体化されていてとても組みやすく、この辺りは一切ストレスを感じさせない設計で感心した部分です。
プラモデルとしては1/100のガンプラより少し小さいぐらいなのでそれほど大きくはないのですが、1/700の艦船模型と比較してみると、とてつもなく巨大です。そして模型は大きさというファクターが違うだけで、見えてくる景色が全然違うのだということを改めて知ることになりました。
ある程度高さがあると、小さい模型では感じられなかった「階層」が認識出来るのです。そしてその様々な階層に設置された円形は、殆どが砲台。上から見てみると、その攻撃的なカタチに圧倒されます。今度は下から見てみると、爆風や砲撃を去なす為に曲面をふんだんに取り入れたデザインになっているのがよく分かります。実際の戦果はどうあれ。
そして1番気に入った眺めが、第一艦橋のクリアパーツを覗き込むと見える内部構造の様子。写真では表現できなかった臨場感があるんです。それは、ぼやけた望遠双眼鏡のシルエットから、逆にこちらを小さな人間が覗き込んでいるんじゃないかと思ってしまうほどです。
当時最新鋭の装備や、理に適った形状をした構造物の集合体が艦橋です。これを組み立てた人の数だけ、興味深いと思える眺めが発見できるのは間違いないでしょう。