「ティラノのお供に作られたプラスチックの地面」を生き生きと蘇らせる、静かで自由な筆塗りタイム。

 恐竜のぬかるんだ足跡、石に草に倒木!いや〜、ジオラマですね。と言いたいところなんですが、これは単純にプラスチックの板を塗装したものでございます。やはり塗装(とデカール貼り)は最大のディテールアップだよおっかさん。こういう地面を塗るのは楽しいったらありゃしない。

 バンダイスピリッツの新作であるティラノサウルスの骨格プラモ。そのハコを開けて一番底に沈んでいるのがこのパーツ。一目惚れでしょこんなの。化石になった骨格の模型をイメージしてるプラモなんだから、味も素っ気もないそれなりの大きさの板でも入れておけば土台にはなったはず。でも、そこにこれだけ豊かなディテールを刻んでやろうと決めた人、そして造形して金型にした人がいるわけです。エラい!100点!

 倒木となんかジュワジュワした植物的なもの。そしてぬかるみに刻まれた足跡の周りは泥が押し出されて盛り上がった表現もされています。有機的なものが樹脂になっているのって、いつも素敵だなと思います。機械で作った造形を機械で再現し直すのがプラモの得意分野だけど、自然の造形を機械で再現するっていうストーリーが好きなんでしょうね私は。

 地面からレリーフ状に盛り上がった造形でシダ植物的なものも認められます。こういう半立体、単色で見てるとあくまでレリーフなんですが、塗ればガッと盛り上がるんですよ。形状を色で分離して、陰影を極端につけることで実際の凹凸以上に沈んだり浮き出たりしている様子が表現できるからです。

 地面はタミヤの情景テクスチャーペイントにMrウェザリングベーストを3種盛って表現(これはフミテシの過去記事を参照しています)。その他はシタデルカラーからそれらしい色をピックアップしながら思うままに塗っていきます。動画配信しながら全部で90分くらいですが、ずいぶんと満腹感があったし、スタティックなメカを塗るのとは全く違う無軌道な物語を楽しめます。

 塗り上がった地面(明らかに生きた大地)と骨になったティラノサウルスが再度合体。地面、シビアに追い込んでリアリティを追求するとか平滑な塗膜を得ようという普段の塗装とは違って、ずいぶんアナログかつファジーな体験です。そういう意味で、巧拙をあまり気にせず「塗る喜び」をダイレクトに味わえる遊びですから、この夏に「なんか塗ってみようかな!?」と思ったら地面を塗るのがいいです。問題は、「地面のプラモ」ってそんなに無いことでしょうかね……。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。