アメリカの大量生産とカスタム文化を浴びるなら/タミヤ アメリカ歩兵偵察セット

 アメリカ産のワークブーツ「REDWING」の最大の魅力は、古き良きアメリカらしさでもなく、ワークブーツらしいタフさでもない。世界中のどんな靴のリペアマンでもアウトソールを修理をすることができることだ。
 仮に、足を入れるアッパーと、地面に触れるアウトソールの間に挟まれた、ミッドソールと呼ばれる部分まではソールが摩耗していないとする。とはいうものの、アウトソール全体は摩耗が激しいので、修理のメニューはアウトソールを全て交換する「オールソール」だ。
 すると、作業者はミシッミシッとアウトソールを剥がしてしまう。その後、具合のいいサイズの新しいアウトソールを接着剤で貼り付けて、固着するのを待ってからコバと呼ばれるエッジを削って仕上げて修理完了。
 元が荒々しい仕上げの靴なので、おおらかなリペアマンでも仕上がりには問題がない。もしこれが十何万もする繊細な仕上がりのドレスシューズなら、信頼の置ける修理屋を選ぶだろう。糸をほどき、コルクを詰め直し……なんてことを任せられるようなところだ。

 タミヤの「1/35 アメリカ歩兵偵察セット」の服を見たときに、いま書いたREDWINGの話と似たようなことを感じた。あまりにもシンプルで、なおかつ機能的。
 きっと、この服はアメリカ中の服飾工場のどこでも作ることができたのではないか。意匠が凝っているわけはないが、ポケットなどはしっかりついているし現場での使用には問題なさそう。服を一目見ただけで、これが大量に作られ大勢のアメリカ兵が着たのだろうという、生産性の良さを感じてしまう。
 そして、ものすごい数が作られたはずだ。アメリカ中の工場がフル稼働している姿が見える。輸送されている姿も見える。いくつかにサイズ分けされたものから、身体に合うものを選んで「行ってこい!」みたいな、そういう力強さを感じる軍服だ。
 そんな雰囲気を十分にまとっている点に、タミヤのプラモデルの良さを感じる。1人の兵士を作っただけで「これはちょっと勝てないわ……」という背景を感じてしまう説得力がある。

 5人セットのアメリカ歩兵の中で一番好きなのは自然な立ち姿の彼で、真っ先に作った。人体を分割するというよりは、洋服の縫い目でパーツを分割するのがマジでカッコいい。これ、実は、洋服のプラモかもしれない。

 ところで、REDWINGには「どこの修理屋にも任せられる良さがある」という話をしたが、もうひとつ良いところがある。消費者と修理屋が起こしたムーブメントとして「カスタムをする」という文化が日本では特に根付いているのだ。白いソールを黒くしたり、ギザギザしたソールに変えたりという世界がある。
 REDWINGをカスタムするように、アメリカ歩兵をタミヤのスプレーのダークアースで茶色く塗った。枯れた風合いは落ち着いた色の木の家具が多い我が家にぴったり。飾る空間に合わせて、好きな色に塗り替えれば、とびきりかっこいいミニチュアが自分の家仕様に早変わりする。

クリスチ
クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。