
USB充電の一体型エアブラシでその名を博したRAYWOODから「新しくNITRO-COMP V1というコンプレッサーを販売することになったのでレビューしてください」というオファーが舞い込みました。結論から言います。このスペックでこの値段は本当に安すぎる……というか、もはや革命的ですらあるので「これからエアブラシデビューしてみたい人」「すでにコンプレッサーを持っているが、出力に不満を抱えてる人」はドンと行きましょう。1万円台半ばでこんなコンプレッサーが手に入っちゃう時代、すごいです。

まずサイズです。結構大きい(H21.5cm×W13.7cm×D25cm)のですが、そもそもコンプレッサーは大きければ大きいほど出力も増します。大手メーカーの模型用コンプレッサーで似たサイズのものが毎分10リットル程度の吐出空気量(価格は3万円台)であるのに対し、このNITRO-COMP V1は毎分23リットル(50Hz使用時)と驚異的なスペック。最大圧力は約0.4MPaとあり、「模型の塗装でそんな高圧使いますか!?」という性能をレギュレーター(装置左に突き出した装置)で調整しながら扱うマシンとなっております。
ここでめっちゃ大事なのが「音」ですが、たとえばGSIクレオスの小型コンプレッサー、L5と比べるとかなり大きく感じます(カタログ値で47db)。しかしそれは試運転での話で、塗装ブースをONにしていざ吹き始めるとハンドピースからのシューシュー音と塗装ブースの稼働音のほうが耳に近いため、机下に置いたコンプレッサー自体が強烈に振動するとか騒音でしんどいみたいな感じはありませんでした。ちなみにこのマシン、オートカットオフが付いているので内部の圧力が一定に達すると(MAXの設定でも数秒で到達します)自動で運転が止まり、ハンドピースでプシューッと吹くと運転を再開します。つまり、吹いてない間は黙っていてくれるのでトータルの騒音は少ない。

個人的に高得点だと思ったのがこの付属品。ハンドピースとコンプレッサーを繋ぐホースがスパイラルとブレイド(メッシュホースで覆われたストレートタイプ)の2種類用意されていて、好みで使い分けられます。ちなみに筆者はコンプレッサーを床置きしたいのと、長めのブレイドホースを使うのが好み。これ単体で買うとけっこうな値段なので、選択肢があるのは最高!

ハンドピースはお好みのものを……といってもピンからキリまでありますが、とりあえずすでにUSB充電式の一体型エアブラシを持っている人はそこからコンバートしてもご覧のとおり使用可能です。
じつのところ、エアブラシ塗装って「濃いめの塗料を高圧&フルテンションで一気に吹きつける」というのが手早くキレイに仕上げる方法だったりします(もちろん表現したいことによっては必ずしもそうでないときがあります)。しかし、出力の小さいコンプレッサーだとある程度以上濃い塗料は霧状になってくれないため、「適切な濃度に薄める→なかなか色が乗らない→時間がかかるし、熟練していないと部位ごとにムラが出てしまう」というスパイラルに入りがち。コンプレッサーの出力が大きいと、かなり濃い目の塗料でも難なく吹くことができますし、もちろん出力を絞れば繊細な迷彩塗装もなんのその、というわけです。
例えるならば、「大排気量のレーシングマシンは高速でも低速でも走れますが、小排気量のスモールカーだと速度の限界がある」……という感じなのですが、NITRO-COMP V1はそれに加えて「大出力なのに同規模のコンプレッサーより断然安い」のがポイント(ちなみに超高額で大きなコンプレッサーは、空気の脈動を安定させるタンクが装備されていたり、音を小さくするためにモーターそのものがオイルに浸かった構造にするなど、より凝った構造になっています)。

限界性能を体感するため、普段の倍は濃いゴールド(金属色は粒子が重たく大きい)を吹き付けてみました。ややねっとり気味の塗料ですらバシッと霧になって一瞬で色が乗るのに感激!これなら大きなモデルをまるっと塗装するときにも時短&きれいな仕上がりを期待できますし、レギュレーターで圧力を落とせばいままで使っていた小型コンプレッサーと同等の吹き味にもなります。
正直これまで使っていた小型コンプレッサーの出力にちょっとフラストレーションを感じていたため、5〜8万円程度の大型コンプレッサーに乗り換えようかな……と昨年末から画策していた私ですが、今回のレビューをもって、このNITRO-COMP V1へのリプレイスを決心。気になるのは耐久性ですが、それにしてもこの価格でこのパワフルさが手に入るというのは、ちょっと夢みたいです。
コンプレッサーデビューを目論むあなた。そして大馬力マシンへの乗り換えを考えていたあなた。NITRO-COMP V1で一気にレーシングスペックを味わってしまいましょう。ホント、快適です。そんじゃまた。