USB充電の一体型エアブラシ、「RAYWOOD RW-084」使ってみて分かったポテンシャルを本音レビュー!

 世はまさに一体型エアブラシ戦国時代!昔だったらエアブラシデビューにはコンプレッサーにウン万円、ハンドピースにウン万円という投資が必要だったもんですが、現在では「とりあえずエアブラシ塗装デビューしてみたいな」という人に向けた1万円以下の選択肢が大量にあります。

 一体型エアブラシの特徴は「ハンドピースと円筒形のコンプレッサーだけでシステムが完結している」「USBケーブルで充電できる」というのがほとんど。Amazonなどのネット通販で手軽に買えるようになった頃は「ぶっちゃけどれも似たりよったりでしょう……」と眺めていたのですが、低価格ゆえに起きるスペック競争がかなり激しく展開されているため、最近では「とりあえず書いてあることはハイエンド製品と遜色ないぞ」というものも少なくありません。

 さて、今回nippperに製品サンプル&正直レビューの依頼が舞い込んだのは株式会社RAYWOODの一体型エアブラシ「RW-084」でございます。読めばわかるスペックと豊富な付属品については下記リンクでごらんください。データをつらつらとコピペしても情報量が増えるわけではないので……。

 さて、見た目です。ハンドピース後半部のハンドルがコンプレッサー部と同色で塗装されており、ニードル固定ナットが露出したデザインはGSIクレオスの最高峰モデル、PS771(3万3000円)を彷彿とさせるスパルタンさ。まあこのへんは美観の問題なので性能には直結しませんが、注目すべきはカップの下にエアアジャスターが装備されていることです。この機構が装備されている一体型エアブラシはまだまだ少なく、本機がある程度こまかい作業にも対応しているということを示唆しています。

▲カップ下のネジを回すことでハンドピースから出てくる空気の流路が広くなったり狭くなったりします

 コンプレッサーとハンドピースが直結される一体型エアブラシの弱点は「コンプレッサーから出てきた空気の量がまったく調整できないこと(常に最大の勢いで空気が吐出されるため、結局塗料の濃度や流量だけをコントロールするしかないということ)」でした。別体型の場合はコンプレッサーとハンドピースがホースで接続されるため、途中にレギュレーター(圧力を調節する装置)を挟んだり、手元に調整機構を備えていたりするのですが、本機はハンドピースのカップ下に付いた「エアアジャスター」と呼ばれるネジを回すことで空気の勢いを変えることができます。

※厳密に言うと圧力と流量とスピードはそれぞれ塗装の特性を決める重要なファクターなので分けて考える必要がありますが、一体型エアブラシは構造上このへんの微調整が一意に決まらないという特性があります。よって、ここではあえて「エアの勢い」という言葉を使っています。

▲ノズルは0.3mm径で、目測の精度は上々。もしこれがコンプレッサー別体型ならば、そこそこ緻密な作業にも対応できるポテンシャルがあると思います

 ぶっちゃけ、どんなエアブラシでも「大面積のベタ吹き」ならばほとんど問題なくこなすことができます。これはハンドピースの性能よりも、ノズルとパーツの距離、塗料の薄め具合といった「使いながら覚える要素」のほうが大きく影響しますし、なんなら缶スプレーでも同じことはできちゃいます。

 ……ということで、今回はまずグリーンで下地をガッツリ吹いてから、その上に「筆や缶スプレーではできないこと」として、ボケ足のある迷彩塗装をしてみます。

▲茶色いラインで迷彩塗装の輪郭を描く。ちなみに本機はレバーの上下と連動してコンプレッサーが自動でON/OFFします

 塗料を溶剤でかなり薄めにし、エアアジャスターをめいっぱい絞って細いラインを描いてみます。全集中すれば実測2〜3mm幅の細さで線を描くことができます。ボケ足の質(塗料の粒子の大きさが均一か、それらが偏りなく飛んでいるか、etc……)を見ると、大きな面積のグラデーション塗装や1/35〜1/48の戦車や飛行機に施す雲形、線形の迷彩塗装ならなんとかこなせそうです。反面、ドイツ軍の戦闘機に見られるような細かい粒状の迷彩パターンや、小スケールの模型に施す迷彩塗装にはきめ細かさが要求されるので、本機にはややシビアな要求だと感じました。

 輪郭を描いてから内側を塗りつぶすように迷彩塗装を完成させます。ツヤ消し塗料ならばそこまで神経質にならなくてもじゅうぶんキレイに塗れますし、何より「ボケ足のある迷彩塗装ができるぞ!」というのはエアブラシを手にしたすべての人が得られる喜び。筆では表現できないことのひとつとして、迷彩塗装をしてみたいというのはエアブラシを買う充分な動機になると思います。

 エアブラシには「大面積も手早く均一に塗れる」という美点もあります。これは缶スプレーでもできそうですが、エアブラシなら塗料の濃度やパーツとの距離をコントロールすることでツヤの強弱も自由自在に操れるようになります(もちろん、どれくらいの塩梅でコントロールできるのかは使いながら体得していくほかありません)。ここでは車体色をマスキングして、ゴム製のスカート部分をしっとりめの質感で塗り上げていきます。

 マスキングを剥がす快感はいつだって極上。ボケ足のある迷彩と、キリッと塗り分けられたゴムスカートの境目が美しく交錯するのはいいもんですね。

 さて、筆ではどうしてもできない(もしくは極めて難しく、鍛錬が必要な)表現がもうひとつあります。それは「均一でツヤのある表面を作る」ということ。こちらもまた缶スプレーで代替可能ではありますが、自分の好きな色でツヤありのテカテカした塗装ができるというのはエアブラシならではのアドバンテージです。

 ここまでのテストから、塗料の粒子の大きさがやや安定しない印象があったため塗料はやや薄め、さらにリターダー(塗料の乾燥を遅らせ、塗れた状態の塗面が自ら平らになろうとする「レベリング作用」を与えるケミカル)を加えてツヤありのピュアーオレンジを吹き付けます。薄い塗料は高圧で吹くとパーツ表面で流れてしまうため、こちらもエアアジャスターをやや締め気味にしてエアの勢いを落としています。

 最初に足付け(わざとザラッとした状態を作ること)をしてから、表面が濡れた状態をキープしながらじっくりと塗り広げていきます。コンディションを一定に保つためのコントロールはかなり難しいですが、80〜90%のツヤ感を持った表面を作ることができました。上から缶スプレーによるクリアーコートをすれば、カーモデルでもじゅうぶん見栄えのする仕上がりになります。

 実際に塗り上げてみたところ、出力の小さい一体型エアブラシでは、ツヤありの塗膜を作るための調整の幅がとっても狭くなるのを感じました。ツヤありの表面を作るのはたっぷりと余裕のあるエアの流量と塗料の濃さの関係を緻密に制御することが肝要。このへんの「余裕」を感じたい場合はハイスペックなコンプレッサーとハンドピースを手に入れることをオススメします。

▲どうしても作られてしまうメタルアニキ

 エアブラシを構成するコンプレッサーとハンドピース。コンプレッサーは文字通り空気を圧縮して送り出す装置であり、大きいほど(=高額であるほど)安定して大きな出力を出すことができます。また、これをコントロールするのがレギュレーターやハンドピースであり、そこにも当然コストをかけた機構や精度を出すための設計製造技術があります。従来型のエアブラシがそれなりのお値段なのにはちゃんと意味があるわけです。

 どっこい、世の中には「筆塗りではどうしてもできないこと」があります。広大な面積を手早く塗る。ボケ足のあるグラデーション塗装をする。景色が映り込むようなツヤありの塗膜を作る……。ひとたびエアブラシを手に入れれば、これらの「やってみたかったこと」が「できること」に変わります。ミリタリーモデルの迷彩塗装はもちろん、マスキングラインも鮮やかなロボットモデルの絶妙な色調、缶スプレーではどうしても手に入らない色のカーモデルが、その日からあなたのものになるのです。

 その先に「もっと繊細に!」「もっとラクに!」「もっと美しく!」という欲求がムクムクと湧いてきたら、その時は財布の中身と相談しながらハイスペックな機材の導入を検討してみましょう。

▲USBケーブルそのものが充電状況を知らせるインジケーターになっているのがナウい、と思いました

 今回の機材をテストして「まず最初の一本として、一体型エアブラシを買ってみてもいい時代がようやく来たな」という印象を抱きました。エアアジャスターがこうした価格帯の機材にも装備されたことによって、エアブラシを使う上で最も重要な「空気の量と塗料の濃さ、そしてパーツとの距離」という要素をあれこれ試すことができますし、間違いなく「筆ではできないこと」の扉を開けてくれます。その感覚は私が最初にコンプレッサーとハンドピースに大枚をはたいて「うおー!迷彩塗装ができる!」とか「ツルツルの表面が塗れる!」と感激したのとまったく同じでした。

 一体式であること、コストが抑えられていることに起因する不自由さはもちろんありますが、そこで感じる「もっとこうだったらいいのに」という感覚は、まずエアブラシを自分で扱ってみなければ絶対にわかりません。そしてそれは間違いなく、「ではどう操ればもっとうまくいくのか、次になにを考えて機材選定をすればいいのか」という判断をするための重要な指針になってくれます。エアブラシデビューを考えているそこのあなた、まずは軽率に(換気できる環境をしっかりと用意して)相棒を手に入れてみましょう。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。