いつでもあなたのデビューを待っている、ハセガワ製「古いほうのトムキャット」。

 いまトムキャットを作りたい人、本当に多いと思う。「どのプラモを作るのがいいですかね」なんて聞かれることもあるけど、これがなかなか難しい。どれでも「作れば出来る」と言えるし、失敗したくないからなるべく簡単そうなのがいい、みたいな気持ちもよくわかる。そういう視点で模型店の棚を眺めると、新しくてパーツが多くて正確で高額で……というのもたくさんあるんだけど、私が小さいときからスタンダードとしてずっとそこにあるプラモもある。ハセガワの「古い方の1/72トムキャット(製品番号で言うとE2とE3)」だ。

 ハセガワはF-14トムキャットを繰り返しプラモにしているのだけど、1/72スケールのモデルで言うなら、1977年に生まれたのが「古い方」、1988年に生まれたのが「新しい方(製品番号はE14)」だ。どちらも現役で模型店に並んでいるので、パッと見では何が違うかわからない。簡単に言うと、古い方はパーツが少なくてディテールが写真のように凸の線で彫られている。新しい方はパーツがこまかく分割されていて(そのぶん組み立ては少々難しく)、ディテールは凹の線で彫られている。

 古いプラモでよく見られる「凸モールド」は、パーツを接着して合わせ目にヤスリをかけてきれいに均すと一緒に削り取られて跡形もなくなってしまう。あったはずのものがなくなってしまうのはちょっと嫌だな……と思うのは当然だ。でも「プラモはちょっと不慣れだけど、トムキャットを作ってみようかな……」という人はこれくらいのパーツ数で、ちゃんとトムキャットに見えるのをそのまま組んだっていいはずだ。合わせ目はそのまま、古いけど手早くカタチになるトムキャットを手に入れる。

 かくいう私も、中学生の時からこのプラモはずっと避け続けてきた。それは「プラモは合わせ目をカンペキに消して全塗装しなければいけない」(しかしこのプラモはそれをやるのがすごくむずかしい)という思い込みのせい。いま初めてこのキットの隅々まで眺めてみると、「それはもっと新しいプラモでやればいいことだな」と思える。何よりミサイルやパイロットが最初から入っているのが良い(「新しい方」はどちらも別売りだ)。

 ついでに言ってしまえば、主翼が前後に動くトムキャット最大の特徴を、このキットは単純だが確実な方法で再現している。組み立てたあとにも遊べる可動ギミック、ド派手なマーキング、二人の主役と大量の武装。新しくて正確でより緻密なキットが無数に発売されていてもなお(=ベテランモデラーにとっては既に役割を終えたと言って良い)ハセガワの「古いトムキャット」がまだこうして棚に並び続けているのは、新しく訪れた飛行機模型ノービスを迎え入れ、大空へと導く(老いてなお実力豊かな)教官のようで、頼もしく見えるのだ。

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からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。