フランスに漠然とした優雅さを抱くことはあれど、私の手が届くフランスは思ったよりも質実剛健で、タフなものが多い。
初めて作った海外のメーカーのプラモデルはドイツレベル 1/24 ベントレー Blowerだ。作りたいと思ってから1年半も「俺には作れないな」と遠くから眺めていた。それが気づいたら「作れるかも」に変わった。「歯ごたえがありますよ」というアドバイスを聞いても、買って作った。外国語の説明書は、プラモデルは言語が理解できなくても作れることを教えてくれたし、難しいプラモデルも形にしたいと強く願えば、頭をひねり、手を尽くして完成までたどり着けるものだなと納得もした。
このドイツレベルのプラモデルの金型が、エレールというメーカーのものだと知るのは遅くはなかった。
エレールはフランスのプラモデルメーカーで、好きなキットがいくつもある。初期の頃の完成品をうやうやしく保管しているのもエレールのものだけだ。
それは、私の手元に揃っているフランス製の革靴たちと近い印象を抱いたからだ。エレールのプラモデルは、突如パーツが細かくなる部分があって、そこを私は「ユーザーに作らせたいと思っている部分」だと思っている。なんというか「お、ここをなんとか形にしたいのだな」という感じがわかるからだ。その割には大味に組ませる部分もあり、全体のメリハリが作っていて楽しい。
そういう様子を見ていると、私が持っている「J.M.WESTON 330」にものすごく似ているような気がするのだ。
当時「Country Jent’s」というタイトルで、さっそうと現れたコレクションはJ.M.WESTONの靴の中でも、よりモダンなデザインをコンセプトとしていたラインから生まれたもの。
デザイナーであるミシェル・ペリーの先鋭的なデザインセンスが成熟し、ようやく顧客の求めるものと交差し始めたころのもの。330は、その中でも最も紳士然とした内羽式のキャップトゥ。繊細なダブルステッチで、強度を感じさせるデザインが美しい。反面、ソールはダブルソールと呼ばれる通常より厚みのあるセッティングでそれをザクザクと豪快に底付けしているのが素晴らしい。そのくせ、つま先は程よく尖っているのでエレガント。
そんな330を思わせる、1/24 ベントレー Blowerを、今度はドイツレベルの箱ではなく、エレールの箱でようやく手に入れた。
フェンダーと本体をつなぐパイプは、パスタみたいに細く、接着しろも少ない。でも、この細さが私を苦戦させて、形にしようと思わせたのだなと思い出す。車体のフレームも組み立てていけばしっかりと剛性を持って形になることを知っている。
それにしてもこのプラスチックの緑色は本当に美しい。これほど綺麗な成型色を他には知らない。「いい緑なんですよね、これ」そう言われて買った私の330も緑色だ。「手に届くフランスは質実剛健だ」と最初に書いたが、こういった素材の色使いは、やっぱり「優雅なフランス」なのだと思う。
1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。