組み立てて満腹!さらに塗装して二度目の満腹!タミヤのKV-2、机の端っこにポンと置いておくとすごい存在感。でも夜な夜な「ウラメシヤ〜」と声が聴こえる。そう、履帯(キャタピラね)が塗られていなかったのだ。戦車といえば大砲と履帯。履帯が塗られてなければ画竜点睛。重い腰を上げて塗る。じつは「組んだあとから履帯を塗る」ってやったことがなかったのだ。
冷静に考えたら砲塔を外してしまうとKV-2だかKV-1だかわからない。ウケる。そしてnippperにはKV-1の履帯を筆塗りしている記事があった。やってることは全く同じ。でもオレにはオレの経験があるからこうして書いておく。タミヤアクリルのダークアイアン(履帯色)を筆に含ませて塗っていく。履帯というのはだいたい凸凹しているのであまり濃いと凹んだところに塗料が入っていかない。水なりアクリル溶剤なりでそれなりに薄めたほうがサラサラと塗れる、という学びがあった。
転輪と履帯が接しているところは平らな筆なら全然塗れるという学びもある。こういうのは本当にやってみないとわからんし、「どうすればできるんだろう」とか言って考えてても履帯には一生色がつかない。「頭でっかち」なんて言葉があるけど、そもそもやったことなければやり方が体得できないタイプの趣味だから、やったもん勝ちである。
問題は履帯の奥側。転輪に邪魔されて筆が入れられない。ちなみに本物の戦車は履帯も転輪も全部泥や土埃の色になってなにがなんだかわからないということも多い。だからこそ戦車模型の達人たちはみな口を揃えて言う。「汚せばわかりません」「筆が入らないところはほとんど見えません」。
そうは言っても筆で塗っているオレの目からは塗ってないところが丸見えだ。でもここで思い切って筆を置いて、戦車をカッコイイ角度でポンと置いてから写真を撮る。マジだ。全然見えない。履帯が履帯の色になっているようにしか思えない。これでいいのだ。この日から、夜な夜な「ウラメシヤ」という声が聞こえてくることはなくなったとさ……。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。