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超巨大な砲塔と、50年目の話し相手/タミヤ 新KV-2

 「火力が必要だ!よし、超太い大砲を持ってきて戦車にそのまま乗っけちゃおう!」というのは慌てふためきながら戦争をしていたころに各国が必ず通る道なんですが、いくらなんでもキミ頭大きすぎるでしょランキングで燦然と一位に輝き続けているのがソ連のKV-2でございます。頭がでかすぎてちょっとでも傾いた姿勢で砲塔を回転させるとそのままコケてしまうレベル……と言えば、どれくらい大変な車輌かわかってもらえるはず。

▲ゴリゴリの鋳造された鉄の塊。こういう質感は「設計」とはまた別のセンスが必要だよな〜。

 1972年に発売されたタミヤの1/35 KV-1に、実車同様巨大な砲塔パーツをくっつけて誕生したのが1975年版のKV-2。私も学生の頃に作ったことがありましたが、どシンプルなパーツであっという間に異形の戦車が出来上がるのでびっくりした記憶があります。
 時は流れて2020年、タミヤからKV-1のリニューアルキットが発売されると解像度がバリッと上がり、そこからさらにアップデートされたパーツを追加して2022年版のKV-2が登場。たまにしか再販されなかったKV-2が、いつでもどこでも手に入る最新&定番アイテムとなって復活したわけです。

 昔のタミヤMMシリーズってかなり線が太くてがっしりした印象なんですが(モーターでゴリゴリ走る模型だったこともあって、なんか全体的に頑丈な雰囲気なんですよね)、令和最新スタイルはかなり繊細かつシャープな彫刻。車体上面に来るメッシュのパーツを見ると、本当にナデナデしたくなるような旨味に溢れています。各所の溶接痕とかもスケール感バッチリで、作ってる間ずっと「ああオレはいま精密な模型を作っているなぁ……」という感触が続きます。

 そして最近のタミヤ製戦車模型で進化しまくっていると思うのがこの「部分分割式履帯」と呼ばれるキャタピラのパーツね。最初からたわみが表現された上面の連なり、前後でぐるりと折り返すところ、まっ平らになった下面の連なりを的確な枚数に分割してあって、これを接着剤でチマチマと貼っていくのです。

 ぐるりんぱと巻けばおしまいの軟質素材製履帯と比べるとなんだか難しそうだしめんどくさそうに思うかもしれませんが、ひるまず組みましょう。ひと昔前の部分分割履帯で感じられた「そうは言っても最後に自分で曲がり具合をちょっと調整しないとな〜」というファジーさがいっさいないので、本当に説明書に書いてあるとおりに順番を守ってペタペタ貼っていくとほんとにリアルな履帯が出現します。いい時代だ!

 形状再現にかなりこだわりの強いキットなので、完成品の見た目で想像するよりもちょっとパーツ数は多く感じます。案外繊細な部品がこんなところにあるんだな……と思う部分もありますが、迷うことなく組み立てられるのがタミヤ製品のすばらしいところ。たとえば砲口のパーツにはライフリングが切ってあるし、十字に入ったミゾも勝手に向きがビシッとキマる設計になっているのなんか、組んでいてとても気持ちいいわけです。

 そして少年時代にタミヤMMを楽しんでいたベテランモデラーへのプレゼントも忘れちゃおりません。3Dスキャンによってハイパーリアルに作られたフィギュアは2体付属。地面に立ってガッツポーズをしているアニキは旧KV-2のフィギュアを彷彿とさせるものですが、めちゃめちゃに解像度が高い&組み立ての工程が楽しすぎる!
 そして新キャラである車体前方のハッチから身を乗り出しているアニキは車体とのフィッティングがバツグン!半世紀前は孤独だったガッツポーズアニキと目線を合わせて配置すれば、いまにも会話が聞こえて来そう。「このあとサウナ行く?」「いいね!」なんつってな。よかったね、ガッツポーズアニキ……。

 ダイナミックなフォルムなのにかなり緻密な構成の新KV-2。旧版の超速で組み上がるシンプルさもまた素晴らしかっただけに、どちらも手に入る環境であれば嬉しいな〜なんて思わなくもないのですが、とにもかくにもこの異形の戦車がまた模型店の棚に配備されたことは素直に嬉しい!最後に組み立て動画を貼っておきますので、みなさんもこのめちゃくちゃな形の戦車をコレクションに加えましょう。そんじゃまた!

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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