タミヤMMというのは、「ドイツ軍の将校」をそれなりの頻度でフィギュアにしているシリーズだったりします。そのものズバリな「ドイツ将校セット」が発売されたのは、シリーズ開始から間もない1971年。シリーズ10個目の商品でした。下のリンクのキットがそれです。
それ以降も馬に乗ってる「ドイツ将校乗馬セット」とか、双眼鏡やら望遠鏡やらを覗いているポージングの人がたくさん入っている「ドイツ指揮官セット」とか、将校を含んだフィギュアセットを発売。あとはドイツ軍のスタッフカー系のプラモにくっついているのが将校だったりというパターンもあります。初期MM以来のドイツ軍人気という要因もある(アメリカ将校セットとかイギリス将校セットはないんですよね)上、指差しポーズがハマりやすく、服装もコートを着てたり乗馬ズボンを履いてたりして普通の歩兵と違うことが一目でわかるということで、ジオラマ用の素材としてドイツ軍将校が定番アイテムになったのもわかる気がします。
▲この真ん中の三人のポーズが、1971年のプラモと同じなのよ
2009年に発売された「ドイツ野戦指揮官セット」は、そんなタミヤのドイツ軍将校プラモの中でもちょっと特殊な文脈に位置するキット。実はこのプラモ、前述のNo.10「ドイツ将校セット」のタミヤによるセルフカバーです。ちょっと「ドイツ将校セット」を画像検索でもしてもらえばわかるんですが、コート姿で地図を持った指さしポーズの将校、その脇に立つブリーフケースを持った士官、MP40を脇に抱えた士官は1971年の「ドイツ将校セット」から2009年の「ドイツ野戦指揮官セット」にポーズごとそのまま受け継がれています。シリーズが長く続いているからこそできる芸ですね、これは。
箱の中身はランナー2枚。装備品とフィギュア本体というよくある配置になっております。今回は将校のセットということで武器やら雑嚢やらガスマスクケースやらといった部品はちょっと余るのが前提。拳銃のホルスターやら双眼鏡やらといった「将校っぽい装備」はフィギュアの方のランナーについています。
タミヤがフィギュア製作に3Dモデリングを使うようになる直前の製品ですが、各部のモールドはシャキッとした精密なもの。ブリーフケースのシワの雰囲気や手と一体化したルガー、細かく分割されたFF33野戦電話など、モダンなフィギュアキットとして「こうなっていたらいいなあ」という部分はソツなくクリアしております。
組み上がったところを見ると、偉い人に帯同しているだけあって、電話してる通信兵以外は色々と勲章がぶら下がっております。ブリーフケースを持った彼は2級鉄十字章、MP40を抱えた彼は1級鉄十字章と突撃章がくっついてることがわかりますね。意外に剛の者なのが拳銃を装填してる下士官の彼。箱絵を見ると首に騎士鉄十字章、左胸に1級鉄十字章と突撃章、ジャケットのボタンホールに2級鉄十字章の略章をつけており、さらに右腕になにかしらのカフタイトルまで巻いてます。お前、ベテランやんけ……。それがわかると、ただ拳銃をいじってるだけのポーズからもなんとなく古強者感が漂ってくるから不思議ですね。
というわけで、およそ40年ぶりにリニューアルされた「ドイツ将校セット」といった趣のキットでありました。ふたつを並べてみれば、この期間でのタミヤ製フィギュアの変化を楽しめるはず。また、ジオラマで使いやすい指さしポーズの将校フィギュアとして楽しむのももちろんアリ。戦車の脇にでも立たせれば、絵面が締まること間違いなしですよ!
ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。