

タミヤとイギリスの縁の深さは有名。例えばMM展開前の1967年には現タミヤ会長の田宮俊作氏がボービントンの戦車博物館に足を踏み入れ、現地で取材をしています。また、MM開始後初の大砲プラモとなったのは、大戦中のイギリス軍対戦車砲である6ポンド砲でした。その後70年代中盤にかけて大量にリリースされた北アフリカ系アイテムでも、イギリス軍ネタは戦車から野砲、果てはダイムラーMk.Ⅱのような地味な車両まで、満遍なくラインナップされています。
が、この北アフリカ系アイテムが猛烈にリリースされたのとは裏腹に、ヨーロッパで戦ったイギリス軍アイテムは案外層が薄い。推測ですが、北アフリカ系アイテムは「その辺の砂場で並べたり写真を撮ったりしてほしい」という狙いもあってガンガン発売できましたが、フランスやらドイツ西部やらといった風景と組み合わせなくてはならない西部戦線の車両やフィギュアは、「こう遊んでほしい」というコンセプトを打ち出しにくかったのではないかと思います。

というわけで長らく、No.7の「イギリス歩兵セット」しかキットがなかった西部戦線のイギリス兵フィギュアですが、90年代の第二次AFVブームで状況が変化。かつて砂場で戦車を並べていたMM少年たちも家の中でジオラマを作ったりするようになり、チャーチルやクロムウェルといったイギリス軍戦車もキットになりました。というわけで満を持して1998年12月に発売されたのがNo.223「イギリス歩兵巡回セット」です。



キットのランナーは合計3枚。フィギュアのパーツが収まっているもの1枚と、イギリス兵の装備品がおよそ3人分くっついているものが2枚という構成です。長らくイギリス兵の装備といえば「北アフリカ色のランナーで成型されたアレ」というイメージだったので、グレーの成型色で抜かれたシャッキシャキのパーツは当時としてはけっこう新鮮だったはず。中身のつまり具合や装備品の突っ込み方で形が違う雑嚢や、ぶら下がり型がそれぞれ異なるエントレンチングツール裏面の銃剣など、均一な雰囲気にならないよう気が使われているのがわかりますね。見たまんまのスコップやツルハシがついているのも、米軍系の装備品とは雰囲気が違って面白いです。

組み立てるとこんな感じ。ゆったりした戦闘服にベルトとサスペンダーを中心としたP37装備という、大戦中の典型的なイギリス兵の服装を再現しております。このP37装備、マイナーチェンジを繰り返しながら60年代くらいまで使われたものでして、イマイチ使い勝手が良くなさそうな大きめの汎用ポーチはイギリス兵の装備としておなじみです。「巡回セット」の名前の通り、4人のポーズは緩く周囲を警戒しつつ歩いている雰囲気。「行軍中の戦車の脇に置くのにうってつけですよ!」というタミヤの声が聞こえてくるようです。

もうひとつ注目したいのが、兵士の顔。というのもこの時期に発売されたMMのイギリス兵はドイツ兵やアメリカ兵とはけっこう明確に顔つきが違っており、全体的に面長で顎のラインが丸め、なおかつ鼻もちょっとだけ大きいという、なんとなくイギリス人っぽい顔つきになっております。1996年に発売されたチャーチルMk.Ⅶに付属している戦車兵もこういう感じの顔つきだったので、これは意図的に雰囲気を変えていたはず。他国の兵士のフィギュアと作り比べてみると面白いですよ。
というわけで、装備から兵士の顔に至るまで、タミヤのイギリス愛が詰め込まれたキットがこの「イギリス歩兵巡回セット」と言えそうです。北アフリカ以外のタミヤ製イギリス兵フィギュアとしては、今でも充分貴重な存在。イギリス戦車のお供として、ぜひ並べてあげたい一品です。