
2代目ローレルというクルマを知らない人からすると、このクルマの「ブタケツ」というニックネームはかなり衝撃的なのではないだろうか。かく言う私も同様で、ハセガワの新作カーモデルだという理由だけで手に取り、プラモデルを通じてこのクルマのスタイリングについて先入観なく知りたいな、と思ったのだった。
前回組んだハセガワのカーモデルが異様に分割のこまかいソアラ(Z20 後期型 3.0GT-Limited)であったため、C130ローレルのパーツはかなりシンプルな構成に見える。しかし結論から言うと、シンプルさゆえにこれをカッチリ仕上げようとするとなかなか高いスキルが要求されるな……という印象を持った。

キットをどう完成させるのかはさておき、ハセガワのカーモデルは実車を3Dスキャンすることによってきわめてホンモノらしいボディ形状を再現している。「らしい」と書いたのは、3Dスキャンによって得られたデータをそのまま縮小することで得られる正確さを基本とした上で、面の凹凸をわずかに強調することでクルマのキャラクターをよりビビッドに味わえるように味付けが加えてあるからだ。ボディサイド、Cピラーから後ろに走るZ字のエッジ、リアエンド左右上端の指でつまんで整えたような張り出し。

上の写真はライティングによって陰影を強調しているが、実物をそのまま小さくしただけではここまでソリッドな面の切り替わりを演出することができない。模型は両目の視界に収まる程度に小さく、左右の視差の小ささはもちろん、影となるはずの部分にも環境光が回り込むことでどうしても立体感が乏しくなりがちだ。実物らしさをブーストするハセガワ流のアレンジは、たしかに功を奏しているなと思える。

グレーのパーツで構成されたキャビンの内部はパーツ数こそ少ないものの、要所を抑えたディテールが気持ち良い。デカールによってウッドパネルやクロームメッキのトリミングを表現する指示となっているが、貼り付けはかなり難しい。もしもクルマ全体のスタイリングを楽しみたければ全体をブラック・アウトして次のステップに進むという決断も悪くない。

足回りも合理的なパーツ数と立体的な彫刻の組み合わせで手早く情報量の多い仕上がりを楽しめる。塗り分けはそこまで複雑ではないが、完成後はほとんど見えない部分なので自分のスキルに合わせて「プラスチックのまま」とか「全部黒く塗る」といった方法を取っていい(プラスチックの時点で色が付いていないからといって、「塗装が必須」と受け止めるのは必ずしも正解ではない)。

C110スカイライン(いわゆる「ケンメリ」)と共通のプラットフォームなんですよ……という解説を読むと、たしかにセミトレーリングサスペンションのカタチは独特だし、プレスラインの入り方もそっくり。ボディのスタイリングがクルマの見た目を決めるとすれば、ハセガワのカーモデルに共通する詳細な「裏側」はクルマの血統を知るための重要な情報源だ。

全部プラスチックの色そのままで組むことをイメージしていたが、形状へのこだわりを感じたくてボディパーツのみグリーンで塗装した。キャビンを接着したシャーシを嵌め込む工程はかなりタイトで緊張するが、思い切りチカラをかけながら所定の位置に収めると、クルマとしての頑丈さが一気に出るような感触を楽しめる。

このプラモデルの要諦はメッキパーツ……とくにエンブレムの類にある。派手さを抑えてシックに仕立てたボディの要所にクルマのグレードや性能を示す流麗な文字がギラリと輝く……のはいいのだけど、パーツは小さく、接着面のメッキを剥がしてからアタリのないボディの表面に「ここだ!」と貼り付ける作業はかなり緊張する。説明書には貼り付け位置を原寸で示した図が用意されているが、塗装したあとのボディに貼り付けるのが一発勝負であることには変わりない。

そこまでスキルフルではないモデラーのために、このキットにはエンブレム類をデカールで表現するという選択肢も用意されている。水転写デカールならば塗装済みのボディにつるりと滑らせ、納得できる位置に来るよう調整できる。立体感はないが、ローレルの雰囲気を味わうのならばこれもひとつの手立てだと思う。このボーナスデカールには番号が振られていない(=「ご自由にお使いください」枠)なので、説明書で指示されているエンブレムとよく見比べて切り取ろう。

「ブタケツ」の渾名の由来のひとつであろう、メッキバンパーに埋め込まれたリアコンビネーションランプもクリアーパーツを塗り分けようと思ったらかなり難儀だが、用意されたオマケデカールをクリアーパーツの上にベタッと貼ると、思っていたよりもずっと雰囲気が良い。このへんはキットを実際に手にしてみないとわからないポイントなので、レビューのしがいがあるな……と思う。

パーツの寸法精度はきわめて高く、ビシッと組み上げれば端正なC130ローレルが出現する。反対に言うと、ビシッと組み上げるのにはある程度のスキルと根気が求められるのがハセガワのカーモデルの特徴だ。さらに窓枠やインテリアの塗り分けなどはある程度カーモデルに親しんでいないとどう攻略していいかわからない部分もあるだろう。しかし、ボディカラーだけ用意して実直に組み上げていくだけでもこのクルマのカッコ良さは十二分に体感できる。ブタケツという渾名は、このさい忘れてもいいだろう。