シャキシャキのバイクに、渋い兄貴たちの共演が激アツの自衛隊プラモをピックアップ!!!
タミヤは別に戦車と兵隊のプラモデルだけを作っている会社ではなく、車やバイクのキットも発売していますよね!そして、時たまそれらの製品のハイブリッドのようなプラモデルが発生します。例えばバイクのプラモデルに組み合わせるフィギュア(ストリートライダーとか)にはMMからのフィードバックも生きているだろうし、逆もまた然り。というわけで、ガチンコのバイクプラモでありながら、バキバキの兵隊模型でもあるというタミヤならではの一品が、この「陸上自衛隊 オートバイ偵察セット」です。
このキットは2000年に発売されたものでして、その当時の陸上自衛隊偵察隊員の姿を再現した内容です。実は世界的にも現代の軍隊でオートバイを運用している国はそんなに多くなく、例えばアメリカ軍でもバイクを使っていないわけではないものの、現在では偵察や伝令といった任務は四輪のATV(全地形対応車)に割り振られることが多いとか。日本は山ばっかだし道幅も狭いから、バイクを持ってることにはそれなりに意味があるんだろうな~という、自衛隊らしい装備です。
キットの箱は正方形タイプ。裏面には偵察部隊員の装備の解説もついてます。なるほど、この当時はコンパスと双眼鏡ケースは革製で、腰にくっつけてたんですね。今はこのへんの装備は全然違うんだろうな~と、20年前の装備を見て時の重みに想いを馳せましょう。
中身はバイクと装備品のランナー、フィギュアのランナーの2枚構成。わかりやすくていいですね。そして肝心のバイクがまた、惚れ惚れするような完成度! パーツ点数を抑えつつ、しかしフレームとエンジンとその他の部品類が重なった、バイクらしい立体的なメカっぽさを堪能できます。マガジンポーチのシワの入り方が一個ずつ違ったり、各種ポケットのフチのステッチまで読み取れそうな細かい装備品の彫刻もすごい。
あと、地味に貴重なのが89式小銃です。タミヤは自衛隊車両はマメにキット化しているものの、普通科隊員のフィギュアというのはそんなに発売されておらず、「陸上自衛隊 イラク派遣隊員セット」があるくらいです。というわけで89式小銃もそれなりにレアアイテム。前後のサイトの形やレシーバーのプレス加工っぽいデコボコ感、ちゃんとくっついてる二脚など、この銃だけ取っても気合いを感じる作り。カッコいい……。
自衛官2人のフィギュアも嬉しい仕上がり。まず何と言ってもこのフィギュアの特徴は「ちゃんと日本人の人形になっている」という点にあります。わかりやすいのが顔のパーツ。2人とも切れ長の目尻に凹凸の少ない顔で、どこからどう見ても日本人。組んで他国の兵隊と並べてみるとわかるんですが、身長や足の長さもちょっと短めになっています。
迷彩服のステッチや腰のベルトについているハトメ、はたまたブーツの紐や縫い目の彫刻も泣かせます。クドくなく、かといって存在感はちゃんとある絶妙な深さ。90年代のAFVブームが熟しきった時期だからか1996~2000年くらいのタミヤのフィギュアは今見ても彫刻がすごくいいんですが、この2人も見所満載です。
というわけで、バイクの人を組み立てるとこんな感じ。なにがすごいって、適当にばーっと両足を張り合わせて上半身を乗っけただけでも、スパッとそのままきれいにバイクにまたがって、ズレずにそのまま立つんですよね!!お尻とシートのフィット感、体重かかってる感もバッチリで、バイクに乗っている人形として違和感ゼロ。装備品も全部つければゴチャゴチャした感じになってカッコいい。めちゃくちゃイケメンなフィギュアです。
もう片方の戦車長氏は、タミヤ伝統の指差しポーズ。右手には説明書に印刷されている地図を持たせましょう、という仕様です。バイクに乗ってる彼だけだと絵面が締まらないので、「ワンパッケージで情景が完結する」という点ではこの人も大変重要。なんか喋ってるっぽい表情もナイスです。
というわけで2体を組み合わせれば、もうそこは東富士演習場。戦車部隊にくっついてる同じ機甲科の偵察隊員が、出発前に地形を見つつ打ち合わせしてるという絵面が、これ一発で完成するわけです。なんてわかりやすく、また既存の自衛隊車両キットと組み合わせやすい状況……! このシチュエーションを切り取ろうと思ったタミヤのセンスが優勝しております。これ一箱で「人間×メカ」のおいしいとこ取りができちゃうし、他の戦車や車と組み合わせればさらに遊びがワイド。これこそ人形遊びの面白さです。装備品なんかを見るとちょっとだけ古い(そもそも現在は自衛隊の偵察バイク自体がもう1モデル新しくなっている)ですが、それを補って余りある魅力を持ったキットなのです。
ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。