

前回フィギュアの方を紹介したタミヤの1/35 M113ACAVですが、今回は車両の方をビシッとやっていこうと思います。これがまた、80年代当時のミリタリーマニアのベトナム戦争に対する気持ちというか、「ベトナムの米軍ってこういうところがいいよね……」というテンションを反映した、いいキットなのですよ。
前回も書いたように、初代M113が発売されたのはベトナム戦争がギリギリ終わっていなかった1974年、そしてM113ACAVが発売されたのは1987年です。ちょうど80年代も半ばを過ぎたこの時期は、ベトナム戦争終結から10年ちょっとのタイミング。この当時はアメリカでも「あの戦争ってなんだったんだろうね……」とある程度冷静にベトナム戦争を振り返ることができるようになった時代だったらしく、『プラトーン』『ハンバーガー・ヒル』『フルメタル・ジャケット』などのベトナムもの映画の名作が相次いで公開されております。ちょっとしたブームだったんですね、ベトナム戦争。
で、当時のタミヤMMなんですが、これがいわゆるAFV冬の時代真っ只中。M113ACAV発売の前年である1986年はなんと「MMの新製品発売がゼロ」という状況です。しかもM113ACAVのひとつ前に発売されたのは、当時のイギリス軍最新戦車で、ベトナム戦争なんか全然関係ないチャレンジャー。そんな状況でいきなり「ベトナムむき出しでございます」という内容のM113ACAVが発売されたのには、1986~1987年のベトナムもの映画ブームと「既存のM113に部品を足せばこのブームに乗れそう」という思惑が、それなりに関係していたのでは……と、おれは勝手に推測しております。


そんなキットなので、「ベトナム戦争あるある」がパンパンに盛り込まれているのがポイント。全体的な構成は、1974年版M113の部品に新規のACAV用ランナーを足したものになっております。もともとのM113は、車体だけではなく兵士が詰め込まれるキャビンや操縦席、エンジンルームの内部まで再現された意欲作で、そのあたりはACAVでもそのまま踏襲。白色の車体内部色がそのまま成形されているので、塗装せずに組み立てただけでも、「装甲車両の車内って、白いんだな……」という普段全然意識しないことを実感させてくれます。

さらにベトナム感が強めなのが、車両以外の付属品。といってもデカールとナイロンメッシュ、銅線といったアイテムなんですが、このデカールに入っている「BALL LOVE」「DRAFT DODGER」といった車両の名前を書いた落書きの書体が、なんというかしみじみと「ベトナムだなあ……」という感じ。このキットにはタバコやコーラの缶といったいかにもアメリカ兵というアイテムも入っているんですが、それらのパーツに貼るデカールがついているのも楽しい。ちなみにこのナイロンメッシュなんですが、M113の中には成形炸薬弾対策として金網で防御力強化を図ったものもありまして、それを再現するための部品となっております。


というわけで組み立てるとこんな感じ。真四角だった車体に防弾板やらM60機関銃やらがニョキニョキ生えて、いかにも実戦を踏まえて強化されましたという風情に。ACAVというのは「Armored Cavalry Assault Vehicle」の略で、これはキットの名前にもなっている装甲騎兵強襲車のことなんですが、どういう意味かというとどうやら「車内から外に出ずに敵を攻撃できます」くらいのニュアンスのよう。車内の歩兵が車体上のハッチから身を乗り出して、左右にM60機関銃を撃てる、というのがこのACAVのアドバンテージだったわけですね。まあ、このキットでは思い切り歩兵が飛び出しておりますが……。


車体の上には鹵獲したものであろうRPG-7、防弾用の金網、そしてガチャガチャと詰め込まれた簡易ベッドと、どこにどの荷物を積むかを兵隊になったつもりで考える楽しみもてんこ盛り。このあたりのヤレ感というか、規則性が乱れている感じも猛烈にベトナム戦的であります。兵員輸送車は歩兵にとって自分たちと共に移動する生活の場でもあったわけで、飲み物の缶やらベッドやら敵から奪った武器やらが詰め込まれた姿は、まさに「動く機関銃陣地」という感じです。

というわけでいざ組み上がってみると、これ一台とフィギュア、それに荷物の組み合わせだけで結構しっかりした情景になりそうな気がしてきます。原型は50年前のキットなのに、車体の中にも外にも旨味たっぷりなのもすごい。80年代の製品だから詰め込めた濃~いベトナム戦争らしさ、今改めて味わってみるのもオツかもしれません。
組み立てサポート/山本海人
