
冷静に考えると、自転車って兵隊の移動手段としては馬鹿にならないんですよね。速度は自動車には劣るものの兵隊が自分で歩くより楽に早く移動できるし、戦車のような大型兵器が通れない道も通過できる。軽くて安くて素人でも整備できるし燃料もいらない上に、川があっても担いで渡れる。個人用の携行装備も積めるし、分解すれば機関銃程度の重火器だって運べる。

というわけで、古今東西の軍隊が自転車を運用してきました。有名なところでは日本軍がマレー半島を攻略する際に活躍した銀輪部隊や、イギリス軍の空挺部隊が使った折り畳み自転車、それに現代でもモンタギューバイクが開発した「Paratrooper」という折り畳み自転車が米軍で使われています。そして、実はそれほどモータリゼーションが進んでいなかったドイツ軍でも、自転車は色々便利に使われていました。タミヤの「ドイツ歩兵自転車行軍セット」も、そんなドイツ軍の自転車を題材にしたキットです。

箱を開けてみると、自転車に乗っている兵隊のフィギュアのランナーと自転車部分のランナー二枚という構成……なんですが、なんか自転車のランナーにもフィギュアがついてる。これはどういうことかというと、もともと自転車とフィギュアのランナーはこの1枚で「ドイツ 軍用自転車セット」という名前で販売されていたのです。この「軍用自転車セット」が発売されたのは1991年のタミヤモデラーズギャラリー。箱ではなくビニール袋にヘッダーがついた状態で販売され、当時の定価は300円。当初はイベントでしか販売されなかったので、それなりに貴重ではありました。90年代からのAFVファンなら、覚えている人も多いのでは。


ということで自転車のランナーは1991年、フィギュアのランナーは2000年に作られたものということになるんですが、今見ても自転車のパーツはかなりシャープ。サドルの下のスプリングの彫刻も繊細だし、スポーツタイプの自転車とは全然違う、実用一点張りのガッチリしたフレーム形状にもグッときます。



で、組み立てるとこんな感じ。なるほど、自転車があれば飯盒やら水筒やらガスマスクケースやらといったかさばる装備品を荷台にくくりつけて、身軽にスイスイ走ることができるんだな~ということが見て取れます。意外に自転車自体に存在感があるし、このまま塗って地面に立たせたら、それで一個ジオラマができちゃいますね。

こうして見ると、「兵士が自転車に乗っている」という見慣れないシチュエーションのプラモは、それだけでけっこう面白いですね。戦っているのでもくつろいでいるのでもない、独特の存在感があります。というわけでこの一体でジオラマ作ってもよし、余ったフィギュアで遊んでもよし、という一粒で二度おいしい内容となっております。「ちょっと変わったMMを軽く組んでみたい」という人には、ぜひオススメのキットです!

