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「人間&ビークル」模型の最小単位なミニマムさ!/タミヤ 1/35 イギリス軍空挺兵自転車セット

▲本日の主役は、チャリです

 自転車というのは、少し昔の軍隊にとって意外に使える移動手段でした。自転車の軍事利用は早くから試みられていましたが、乗ったまま銃を操作できなかったり、自動車に比べて走破力も速度も劣るという弱点があります。が、自転車は調達価格が安く、乗るのに必要な訓練もなく、ややこしい地形でも踏破することができます。なんといっても、トラックや装甲車を揃えて兵隊の輸送を機械化するのはけっこう大変。ということで、第二次大戦あたりまでは自転車部隊を用意している軍隊は、それなりにあちこちにありました。

 といっても、それら自転車部隊の大半は、機械化が遅れがちだった枢軸国側に偏っていました。が、連合国側でも自転車を活用したのが空挺部隊です。軽くて頑丈な自転車は輸送機からのパラシュート降下にも耐えられることから、空挺部隊の移動手段として重宝されました。空挺部隊の装備品は歩兵と一緒にパラシュートで降ろせるものに限られることから、大型のトラックや装甲車を使うことは難しい。というわけで、空挺部隊の隊員は一緒に飛び降りた折り畳み自転車で、戦場を移動したのです。

▲パッケージイラストは、タミヤのプラモの箱絵を多数担当する大西先生のもの。毎度のことながら太陽光線を浴びた白人の皮膚の透明感がすごい

 というわけで前置きが長くなりましたが、そんな自転車&空挺部隊なアニキたちを再現したフィギュアが、タミヤの「イギリス軍空挺兵自転車セット」です。箱はMM伝統の正方形のやつ。なんか懐かしくなるサイズ感ですよね、この箱。

▲人数が2人なので部品もさほど多くない
▲空挺部隊らしい、大きめのリュックもついてます
▲フレームを真ん中で切れば、降下時や車両に詰め込む際の折りたたんだ状態になります
▲畳めば体積は半分。チェーンやスポークも繊細です

 箱の中にはランナーが3枚。フィギュアのパーツがくっついたものが1枚と、自転車および装備品のパーツがくっついたものが2枚という構成です。やっぱりこのキットで大注目なのが、折りたたみ式の自転車。湾曲したクラシカルな雰囲気のフレームはこの英軍空挺部隊用自転車の大きな特徴で、直線的なフレームを採用していたドイツ軍の自転車と比べると随分優美な雰囲気です。折りたたんだ状態を再現するにはフレームの途中にあるヒンジ部分をカッターで切る必要がありますが、細い部品なのでそれほど難しくはありません。

▲完成! 不案内な場所にパラシュートで降下してるんだから、「どっちに行くんだっけ?」みたいなポーズなのも当然なのだ
▲空挺部隊用のスモックを着ているアニキ。お尻の後ろにぶら下がってる謎の布は、股の間から体の前へ通してスモック前側の裾のボタンで固定することで、降下時に裾が巻き上がってしまうことを防ぐ帯です

 組み上がるとこんな感じ。戦闘服の上から空挺部隊用のデニソンスモックを着た、典型的な大戦中のイギリス空挺部隊の服装です。頭部はヘルメットか、イギリス空挺部隊の象徴とされるワインレッドのベレー帽を被った状態かの選択式。また、腕のポーズも2種類から選ぶことができます。指差しポーズのアニキが肩から斜めに下げているバンダリアー(肩掛け式の弾薬ポーチ)のぶら下がり具合が絶妙。

▲地味にこの人も荷物が多い。腰の後ろに横向きにくっついているポーチに注目

 指差しポーズのアニキの背負っているリュックの大きさにも目がいきますが、地図を持っている方のアニキも普通の歩兵より大荷物。普通なら体の前にふたつ吊り下げているだけのはずの弾薬ポーチを、腰の後ろにもうひとつ取り付けるよう説明書に指示があります。とにかく体に括り付けられる限界の荷物をぶら下げて飛び降りなくてはならない、空挺部隊らしい荷物の多さです。

 というわけで、「イギリス軍空挺兵自転車セット」でした。自転車といい荷物の多さといい、これぞイギリスの空挺部隊というエッセンスが詰め込まれた逸品です。その割に部品点数も少なめで、作りやすいプラモデルになっているのもありがたい。「人間&ビークル」模型の最小単位なミニマムさと、空挺部隊のテイストを味わえるキットなのです。

しげるのプロフィール

しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

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