あの日辛いと思い込んだ玉葱と、クルマのプラモ/タミヤ 1/24 ニッサン スカイライン GT-R VスペックII(R34)

 今日は辛くないよ。まずひと口食べてみな? なんて、苦手な玉葱をジーッと睨みつける娘をそう諭すたび、僕が子供のころに途中で投げ出してそれっきりになってしまっている”クルマのプラモ”の事を思い浮かべてしまいます。それが、タミヤのスカイラインR34 GT-R。

 「まぁ、そのうち気が向いて食べられたらいいか」と、毎度残った甘い玉葱と辛い思い出をサッと片付けていたのですが、それもおしまいにします。娘の「からくなかった!」という言葉とともに、お皿が空になるようになりましたから。

 今より小さく細かったはずの指ですら、つまんだ細かいパーツを定位置に持っていくことが思い通りにできず、ムシャクシャした思い出がフラッシュバックします。しかし、しっかりとパーツが摘まめる精密なピンセットを使ってみると、それはじつに容易。つまんだパーツのディテールをジーッと眺めては、良いじゃないか……とニヤけてみたり、パーツ同士の合いの良さに感心するといった余裕が生まれ、自分自身のクルマのプラモへの感度の高まりに心が躍ります。

 蓋を開け、接着剤を含んだハケを瓶のフチに添わせて「ほんの少し」の量に調整する。今では当たりまえに調節できるようになったけど、こんな小さなことでプラモは組みやすくなっちゃうんだから不思議。

 水よりもっとサラサラした接着剤は、パーツ同士の接合部にスーッと流れてくれます。昔は白い蓋の接着剤しか知らなかったので、パーツの断面にくまなく接着剤を塗り付けていました。長いことパーツを押さえつけたり、それでもうまく貼れなかったり……というのを繰り返しているうちに「接着剤が必要なプラモは煩わしくてテンポの悪いものだ」と決めつけていたように思います。

 それも今なら大丈夫。パーツ同士の合わせ目に、ほんの少しだけスッと接着剤を流せば、すぐにくっついてしまう速乾の流し込み接着剤が有るからです。昔のプラモ作りを知っているほど、これには驚きを感じられるはずです。素早く進む接着作業は煩わしいどころか、爽快感すら得られるリズミカルな工程になりました。

 長年のあいだ難しいと思い込んで避けてきたクルマのプラモを、僕はいま拍子抜けするほどテンポよく、楽しく作れています。あるときまで知らなかった便利で使いやすいツール、当時では考えられないような性能を持つ優秀なマテリアル。それらに思いっきり寄り掛かってみると、子供のころの辛い失敗経験はあっさり愉快な思い出に変わってしまいました。

 「ほらね? 辛いどころか甘くて美味しいでしょ?」

 パクリパクリと玉葱を頬張る娘に向けた妻のひとことに、「ほんとそうだったよ」と思わず僕が返事をしてしまうのでした。お父さんもクルマのプラモが甘くなったよ。それではまたの機会にお会いしましょう。バイバイ!

ろろ
ろろ

1988年、ギリギリ昭和生まれ。
web媒体中心の広告デザイナーをしています。
模型以外ではその辺の景色を写真に撮ったり、飲酒を好みます。