中国発のヤングなプラモメーカーが贈る「中身がメカのカブトムシ」、めっちゃイイ出来です!

 カブトムシとメカの融合。男子小学生が好きそうなものがカレギュウ的に合体した概念として、日本にはメカブトンというすごい発明がある。今回は中国のSUYATAというメーカーから発売されたプラモデル、「メカヘラクレスオオカブト」である。プラスチックの色は4色。パーツがわりと多く見えて最初は怯んだのだが……。

 上海のデザイナー2人組で立ち上げたメーカー、SUYATAはかなりユニークなオリジナル企画を連発していて日本でもそれなりに知名度が上がりつつある。かなり無邪気で奔放な「こんなプラモがあったらおもしろいな」というデザインをボンボコ金型にしてしまうあたりが中国の景気めっちゃいいな〜という感じなのだが、「これ、わりと元ネタがあったりしますよね」とか「いざ買ってみたらけっこう組みづらいんですけど……」みたいなのも散見され、なんというか全体的に若い。

 とは言え、やろうとしていることをじっくりと眺めていると「やりたいことはわかる」という感じがするし、「プラモデルというカルチャーがめっちゃ好きなんだな」というのがわかる。なにしろSUYATAの二人組にはWF上海というイベントで実際に会って話したのだが、本当にイマドキのシャイな若者という感じで、オシャレで謙虚な振る舞いにはちょっと驚かされた。そんな彼らが、今回のメカヘラクレスオオカブトにかける意気込みもかなりのものだったのだろう。組んでみたらこれがめちゃくちゃに組みやすいし、楽しい。やりたいことと、設計がしっかりと噛み合っている。

 カブトムシというのは甲虫なのでツルンとした外装で覆われて足がニョキッと出ている。その中身をごっそりメカにしたらどうだろうか、というアイディアだが、とにかくそのメカっぷりがすごく良いのである。いい曲率、いい密度感、ありそうなディテールの寄せ集めでミキシングビルド(キットバッシュとも言う。プラスチックモデルのパーツをごちゃまぜに組み合わせて新たな造形を作る遊びだ)をしているようなデザイン。

 ディテールもカチッとシャープで国産プラモデルなみだし、パーツ同士のハメ合わせの固さや可動機構についてもなんだか無理がない。立ち上げて数年でこんなにプラモの設計/製造がうまくなってしまうのは、どんどん製品化してどんどんフィードバックしながら走っているからに違いない。とにかく、驚かされる。

 説明書もフルカラーだし、かなり読みやすい。パーツが組んだ後に取れそうなところやちょっとハメ合わせがキツすぎるところは流し込み接着剤を少量塗ったりしたが、ほとんどの箇所が問題なく組めるだろう。べつに何かを「再現」してやろうという感じでもないし、なにかのシリーズだからパーツ数はこれくらいで……という制約もない。のびのびと好きな造形と色の組み合わせを立体化して誰かに組んでもらいたい!というパッションがいい具合のパーツ数とスピード感で伝わってくる。組み始めたら、止まらない。

 頭&胸のユニットも、ただ塊が出来上がっていくのではなく、意味ありげな器官や配管でウニョウニョと繋がっている立体的かつ重層的な構造が楽しい。そもそも、どんなもんが完成するのかわからないのでこちらもワクワクする。プラモデルにおいて、知らないものを知らない手順で組むことのおもしろさは、絶対にある。食べたことのない料理を食べるような。

▲腹。そこから脚が出るんかい……と思うが、まあメカなのでいいことにしよう。
▲6本の脚はすべて同じ造形。どこもプラスチック同士の摩擦に頼った関節なので、コキコキ遊んでいるとヘタりそう。ま、そっと飾っておくのが大人のたしなみだね。

 それぞれのユニットを合体させると、見たことのない機械がどーんと現れた。ゾイド世代にもバッチリだし、メカブトンがこれくらいの解像度だったらおもしろいなぁとか、いやこれはガンプラのフレーム的な概念でもあるな、とかいろんなことを考える。ただ、ひとつだけ言えることは「オリジナルのメカとカブトムシが合体したプラモデルをいきなり前後の文脈なしにポーンと製品化できることって、すごすぎるな!」ということ。ハコから説明書からパーツまで、すごく余裕がある感じ。余裕があるって、いいよね……。

 裏返して、またニマニマする。「金属色にしたいところがあるなぁ」とか「ここにスミ入れしたら盛り上がるだろうなぁ」とか、プラモデル的なプラスアルファの喜びを想像することもできるし、このままでも充分おもしろい立体物として飾っておける完成度だと思う。タッチゲート(パーツをワクからもぎ取れるよう点で接している形状)がパーツの切断痕を汚くしてしまうのが玉にキズだが、これは腕に覚えがある人ならばどうとでも対処できるだろう。

 

▲外装をくっつけると中が見えなくなるので惜しみながら……
▲完成〜!ウェザリングカラーでサビやホコリを載せるとメカメカしくなるかもね。

 ということで、SUYATAのメカヘラクレスオオカブトが完成。いままでの個人的なSUYATA観(モチーフはおもしろいしパーツの見た目もなかなかいいんだけど、組み味や確実性に欠けるという印象)をバコーンと覆してくれる好キットでした。こういうの、好きでしょ?と投げかけられた中国からのプラモデル的ラブレター。みなさんも、ぜひ。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。