ガチャガチャした重ね着は後期ドイツ軍の証! ストーブとシェパード、そしてタミヤではちょっと珍しい厳寒の東部戦線(ドイツから見て東ヨーロッパでの戦い。主にドイツ対ソビエト連邦の戦い)を感じさせるフィギュアは、90年代AFVブームのトレンドを感じさせます。
このキットが発売されたのは1996年。まさに90年代AFVブームの只中というタイミングです。「野戦会議セット」というネーミングの通り攻撃前の打ち合わせというシチュエーションのキットではあるのですが、実はこのキットの見どころは、兵士たちのガチャガチャした服装。シリーズ開始から90年代に至るまで、タミヤのフィギュアキットでは割と全員制服をかっちり着ている人が多いのですが、この野戦会議セットでは大戦後半の東部戦線らしいいろいろな装備を混ぜこぜにした服装となっています。
服装の散らかり具合は、この箱の時点でも充分に伝わってきますね。フィールドグレーのオーバーコートやリバーシブルの綿入り防寒パルカを着用し、頭にかぶっているのもヘルメットやら略帽やらでごちゃごちゃ。この服装の散らかり具合こそが、大戦後半の東部戦線らしさでもあります。本当はもっと色々散らかっている服装もあるんですが、オーバーコートとパルカだけにとどめているのがタミヤらしいといえばタミヤらしい。
ランナーは二枚構成。びろっと広がるコートの裾やストーブ、シェパード犬と、普通の歩兵セットでは見かけないものがちらほら。90年代AFVブーム爛熟期のフィギュアなので、どのパーツも見事な立体感です。サスペンダーに開いている長さ調節用のホールがプチプチとモールドされているところなんか、しみじみ泣かせますね。ニットの手袋の網目や、ウールのコートと綿入りのパルカとのモコモコ感の違いなどは、異素材が組み合わされた服装ならではの面白さです。
で、組み立てるとこんな感じに。静かなポージングながら、並べるだけできっちり情景っぽくなるあたりはさすがにタミヤ。野戦会議セットとはいいつつ実際に会議っぽい感じのポーズの人はボードを持っている2人だけなので、時計を見ている人や機関銃を担いでいる人は単品で他の情景に投入することもできそうです。しかしまあ、全員とにかく寒そうだな……。
前述のように90年代以前のタミヤはバキバキの東部戦線っぽいフィギュアは割と避けがちであんまり前例がないんですが、このキットではストーブまで立体化してそれに真っ向挑戦しているあたり、当時のトレンドが見えてくるような気がします。それを置いといても各部のモールドは今見てもキレキレで遜色なし。後期ドイツ軍らしいややこしい重ね着の魅力を、是非とも味わっていただきたいキットです。
ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。