プラモ先輩と40歳のハセガワ コルセアが教えてくれた「プラモの豊かさ」


 今回のハセガワ1/72スケールピックアップは定番キット「F4U-1D コルセア」。その昔、私がスケールモデルをはじめたころ、あるモデラーさんに「コルセアはタミヤとハセガワ、両方出ているけどどちらのほうがいい?」と聞いたことがありました。
 「まずタミヤを買ってから、次にハセガワを買ってください。」意外な答えが帰ってきて、自分はびっくりしたものです。両方なの!? キットの発売はハセガワが1981年、タミヤが2000年になります。

▲タミヤのコルセアはすごいです。第二次世界大戦中に、タミヤ会長の田宮俊作氏がコルセアが飛んでいるのを見たのがきっかけで、”あの飛行機”を作るという執念にも似た力が働いています。詳しくは以下の記事を御覧くださいね
▲ハセガワのキットは1981年生まれの40歳! ハセガワに比べて新しいタミヤのキットを見たあとでは見劣りするのかと思いきや、これはこれでシンプルでなかなかに見どころの多いキット
▲スッキリみやすくてシンプル! 説明書を開いた瞬間に行けそうだなと思わせてくれます

 ハセガワのコルセアがどれぐらいシンプルかって、この説明書を見るとよくわかります。ひとつひとつの項目もスッキリしていて、パーツがギュッとしているところは脚まわりだけです。


 コルセアといえばやっぱり逆ガル翼。パワフルなエンジンのおっきなプロペラが地面につかないように、翼を下げて脚への負担を軽減したり、空母への着艦を安定させることを狙っています。パーツ表面のぎゅっとした曲がりも面白いですが、翼の折り畳み部分はスジボリで、ほかのパネルラインは凸モールドという表面表現の違いも面白いですね。さらに翼の波打った表現も見どころです。

▲タイヤは派手に刻まれたパターンがそれっぽさを演出!
▲薄シャープなエンジンカウルもなかなかグッド。搭載したエンジンはダブルワスプなので、いちおうF6Fヘルキャットとも似た者同士ということになります。排気管の取り回しなどぜんぜん違いますが
▲キャノピーは風防・天蓋の一体型です。のりしろ多めで接着もしやすいです
▲デカールは紺一色の上から貼る白チェッカーが特徴的なものです。この”チェッカーボード”隊は、海兵隊の部隊で、空母をベースに戦ったようです。朝鮮戦争にもコルセアで参加しています
▲胴体の入ったランナーは5パーツです。プロペラに増槽、そして胴体。照準器やアンテナも一体化しているところにこのキットの思想が見えますね

 だから組み立ては神速。さっと胴体が、そして翼が、エンジンが集合してきます。塗らなければ30分で、塗っても1日で完成できるのでは……?

 この逆ガル翼、この翼を見るだけでこの機体がコルセアだと判別できます。シルエットが猛烈な個性なの、良いですよね。紆余曲折の結果、P-51より長命だったというのもなかなかドラマがあります。

 この後姿も好みのアングル。案外胴体が太く、頑丈そうに見えたり、地面が見づらいというコクピットの絶妙な位置や小ささに驚いたり……。ぐるぐる見回して楽しい、それも模型の魅力ですね。

▲左がハセガワ。右がタミヤ

 現在ではガンプラなどでも、さまざまなグレードや時代の違う同じモチーフを見て、このキットのここはこうなっている、こういう考え方で作られている、という会話がいろいろなところでなされていますよね。タミヤのコルセアとハセガワのコルセア。それぞれにキットを作った思想があり、考えられた分割の違いがあり、ただ実物を縮小しただけではない模型の魅力があります。

 同じモチーフのプラモが複数あると優劣をつけたがるものですが、その見方だけがプラモの楽しさではない……プラモが増えれば増えただけ豊かな世界が広がると思います。かつて聞いたスケールモデル先輩の言葉の意味が、40歳のハセガワのコルセアによってようやく最近わかったような気がしたのでした。

けんたろう
けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。