
今回のハセガワ1/72スケールピックアップは定番キット「F4U-1D コルセア」。その昔、私がスケールモデルをはじめたころ、あるモデラーさんに「コルセアはタミヤとハセガワ、両方出ているけどどちらのほうがいい?」と聞いたことがありました。
「まずタミヤを買ってから、次にハセガワを買ってください。」意外な答えが帰ってきて、自分はびっくりしたものです。両方なの!? キットの発売はハセガワが1981年、タミヤが2000年になります。



ハセガワのコルセアがどれぐらいシンプルかって、この説明書を見るとよくわかります。ひとつひとつの項目もスッキリしていて、パーツがギュッとしているところは脚まわりだけです。

コルセアといえばやっぱり逆ガル翼。パワフルなエンジンのおっきなプロペラが地面につかないように、翼を下げて脚への負担を軽減したり、空母への着艦を安定させることを狙っています。パーツ表面のぎゅっとした曲がりも面白いですが、翼の折り畳み部分はスジボリで、ほかのパネルラインは凸モールドという表面表現の違いも面白いですね。さらに翼の波打った表現も見どころです。







だから組み立ては神速。さっと胴体が、そして翼が、エンジンが集合してきます。塗らなければ30分で、塗っても1日で完成できるのでは……?

この逆ガル翼、この翼を見るだけでこの機体がコルセアだと判別できます。シルエットが猛烈な個性なの、良いですよね。紆余曲折の結果、P-51より長命だったというのもなかなかドラマがあります。

この後姿も好みのアングル。案外胴体が太く、頑丈そうに見えたり、地面が見づらいというコクピットの絶妙な位置や小ささに驚いたり……。ぐるぐる見回して楽しい、それも模型の魅力ですね。

現在ではガンプラなどでも、さまざまなグレードや時代の違う同じモチーフを見て、このキットのここはこうなっている、こういう考え方で作られている、という会話がいろいろなところでなされていますよね。タミヤのコルセアとハセガワのコルセア。それぞれにキットを作った思想があり、考えられた分割の違いがあり、ただ実物を縮小しただけではない模型の魅力があります。
同じモチーフのプラモが複数あると優劣をつけたがるものですが、その見方だけがプラモの楽しさではない……プラモが増えれば増えただけ豊かな世界が広がると思います。かつて聞いたスケールモデル先輩の言葉の意味が、40歳のハセガワのコルセアによってようやく最近わかったような気がしたのでした。