晴れた日は、戦艦のプラモデルを空に飛ばそう。

 フネの速度や性能を決めるのは船体形状。で、船底まで再現された艦船模型は「フルハルモデル」と呼ばれるけど、ふつう船底は水の下に沈んでいて見えない場所だ。なので、鑑賞するために台座をくっつけて展示するのが慣習となっている(船底がベタッと机の上にくっついた状態で展示するのはヤボであるというお話)。

 フネと言われて想像する姿はだいたい海に浮かんでいるので、「フネの模型」は浮かんでいる状態を再現したものと水の中に沈んでいるところまで再現したものに大別される。戦車や飛行機の模型がベタッと地面に置かれることが多いのに対して、フネが本来持っている形状を再現しようとすると「台座」(=実際には存在しない)が必須になるというのは、他のジャンルの模型で見られないちょっとした弱点のように思える。

 そこで、庵野カントクは『シン・エヴァンゲリオン』という空中格闘エンターテイメントに華を添えるため、戦艦そのものを空に浮かべるという手法を使った。昔から空中戦艦というアイディアはアニメやSFにも取り入れられてきた(『宇宙戦艦ヤマト』はその最たるものだ)が、現実の戦艦は空を飛ばない。だから『シン・エヴァ』の冒頭では細い透明な糸のようなもので戦艦が宙吊りになっている。

 精魂込めて作った戦艦のプラモが大破したらちょっと嫌なので、パチパチ組めばミズーリになるプラモを作った。艦首と艦尾の甲板に小さな穴を開けて、マス釣り用のテグスを通す。キラッと輝いて見えてほしいのと、ある程度の強度が欲しかったので、選んだのは4ポンド(1号=直径0.17mm)。晴れた休みの日に外に出て、ミズーリを空に飛ばす。

 青空が見えて、目線よりも高い建物が戦艦の背景にならないような場所を探す。ミズーリが強風に煽られるが、その巨体がブランブランと動き回るさまがかえって「リアル」に見える。少し傾いた陽を艦橋構造物がキラキラと跳ね返すのをファインダー越しに眺めると、その精緻な造形にハッとさせられる。机の上で近視眼的に見るのとは違ったスケール感と、水面下に沈んでいたら見えない優美な曲線。グレーと赤のコントラスト。

 晴れた日は、戦艦のプラモデルを空に飛ばそう。プラモでしか実現できない、新しい遊び方が生まれた2021年3月の思い出に。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。