空に太陽がある限り/タミヤのソーラーカーで感じる「模型の真髄」。

▲ブリスター吊るし売りの形態はむしろ最近の量販店でこそ映える?

 店頭でよく目にしてはいるんだけれども買ったことがない……自分にとってそんな存在の代表がソーラーカーのプラモデルだったりする。

 92年に発売開始のタミヤのソーラーミニチュアシリーズは現在に至るまでおそらく唯一のソーラーカーのスケールプラモデル(自分調べ)。縮尺1/50の「実物を再現した模型」であり、太陽電池で走行する「ソーラーカーの本物」でもあるのだ。初出価格¥1600はミニ四駆の当時価格の3倍弱、標準的なBB戦士の3倍強となかなか高価。そんなこともあって小学生だった自分の中では「漠然と興味はあるけれども買えない」というポジションだった……。

 時は流れてオジサンになって、ようやくうっかり買ってしまったんだな。30余年の期待を胸に、ブルーイーグルが舞い降りる!

▲ビリビリ破いて開けるタイプのブリスター

 ブリスターから部品を出してみると部品に隠れて見えなかったマシンの三面図が現れる。お店に吊るされている状態からは分からない秘密をひとつ暴いてしまった……丁寧に開けて良かった。サクッと組もうと勢いよく破いていたら悲しい気分になるところだったぜ……。

▲総パーツ数14点。(ネジ・シャフト・ギヤ・配線済み太陽電池/モーター含む)

 開ける前からわかっちゃいたけどとにかく部品が少ない。ホントにすぐに出来上がっちゃいそう。そういえば「値段相応の組みごたえがなさそう」なのも子供の頃躊躇した理由だった。きっと太陽電池という最新未来デバイスのコストなのだ。だからお値段が張るのだ……。あの頃の自分はそんな風に思っていたYo!

▲「ランナーに固定保護されている配線済み太陽電池/モーター」はこのキットのキモ

 ランナーにパチンと固定された太陽電池とモーター。配線済みでユーザーはここから外して組み付けるだけ。しかもスナップフィットとビス止め1か所で接着剤不要。ドライバー必要。空に太陽。

 モーターへの配線もランナーへのアッセンブリも「ひどく梱包コストのかかる製品だな、こういう部分へのコストがお値段に乗っかってしまうのだな、他に割きたかったコストを特殊部材が吸っていってしまう……」等と勝手な想像を胸に組み立ては続く。

▲このシールのテクスチャはなんだ?これを作った者は誰だ!?

 「あれ、このシール割れてる?劣化してるの?」と一瞬焦った。しかし、これはそもそもこういう仕様。空に太陽。

 このテクスチャは何かというと太陽電池パネル表面のこういうシワクチャにしたアルミホイルを広げたような独特の質感を再現しているんですね。

▲「実車の太陽電池相当部分」を再現するシール。アガる!

 「実車が背中一杯に並べている太陽電池パネルを再現」するためにシールが用意され、そのシールを貼った中央に「実際に模型を走行させるための本物の太陽電池」を露出させる穴が開いている。

▲「実車と違うけど本物」の太陽電池を実装する瞬間!

 実在する本物のソーラーカーの模型の中に、模型としてのウソをついて見た目の違う本物の太陽電池を内蔵して走らせる。リアルなウソとリアルじゃない本物がひとつの模型に同居する……不思議だけれど本当の話。

▲キャノピーのグロスブラックは塗装済み。

 最後に、本物の太陽電池を取り付ける穴をふさいで実車のアウトラインに近づけるための透明なカバー(もう何が何だか)を取り付ける。

▲未塗装、シール貼りこみ、素組み。この質感、充実感!

 正直、退屈な知育教材だろうと小馬鹿にしている節があった。あの時手を出せなかったノスタルジーを味わう存在だと思っていたら想像以上に「タミヤのスケールモデル」だったので妙な感動がこみ上げてきてこの原稿を書いている。太陽電池のテクスチャシールを貼るあたりから急激に「本物はこんな感じだよ」とか「でも本物はこんなとこに穴開いてないよ、これは模型走行のための頓智ね、ト・ン・チ」と語りかけてくる。とんち番長もびっくりのプラモである。 

▲陽の当たる縁側とかで走らせたい。 

 日向に置けばもちろん走る。スイッチはなく太陽電池とモーター直結だから陽の当たる棚には静置できない仕様(!)。空に太陽!

 手のひらに載る程度の組みあがりサイズだけれども、小さなタイヤと小さな太陽電池から絞り出したパワーでよく走る。空に太陽がある限り。

HIROFUMIX
HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。