オトンとアルファとマルティニと。

 この時期になると、クリスマスのご馳走と一緒に、嬉しそうにボトルを品定めしていた父の姿を思い出す。選ばれるのは決まってマルティニのアスティ・スプマンテ。甘口のスパークリングワインだ。家族も飲みやすいように、と選んでいたのだろうか。そんな父は、レースのスポンサーで有名な「マルティニカラー」の大ファンだった。

 クリスマスのご馳走と一緒に飲むお酒。だから、私にとってマルティニはお祝いのお酒だ。今日は仕事でちょっといい事があって、自分へのご褒美って程でもないけど、帰り道にマルティニを買って帰った。

▲ 白ボディに赤と青。「マルティニカラー」です。なんかもう無条件でカッコいいんですよね…。

 そんな思い出に浸りつつ、プラモデルの箱を開ける。

 このレースカーのベースになった「アルファロメオ 155」は私が生まれた時の父の愛車で、つまり、私が生まれて初めて乗ったクルマだ。

 愛車がタミヤのプラモデルになっている僥倖。一見すると普通のファミリーセダンらしい四角いフォルムだが、しばしば「官能的」とも評される、緊張感を伴ったエンジンの吹け上がりは幼心に強く印象に残っている。

 「生まれて初めて乗ったのがこんな良いクルマだったんだから、そりゃクルマ好きになるよなぁ…」というのが、父に似てクルマ好きに育った私への、酔った時の父の口癖だった。

 ドイツ・ツーリングカー選手権に参戦した仕様を再現した本キットでは、ボンネット内部のパーツまで用意される。イタリア生まれのファミリーセダンが、異国ドイツで並み居るライバル達と闘うために注ぎ込まれた技術の粋を指先で味わう事ができる仕様だ。

▲ エンジンはオーソドックスなパーツ構成ながら、カムカバーの「alfa romeo」のレタリングが粋です。
▲ 複雑な排気管の取り回しをワンパーツで再現。萌えます。右側のファンネルも銀ピカに塗るとバケるやつですね…。
▲ プッシュロッド! F1で見るやつ! はい、ここテストに出ます!
▲ ボディとフロントカウル。この四角さとエアロ形状に時代を感じます。なんかこう…ガンダムなんですよね…。(伝われ!)
▲ カルトグラフ謹製のデカール。ありがてぇ…。「MARTINI」のフチの金が上品なんじゃ…。

 ハイチューンされたメカとは対照的に、インパネは市販車と同じもの。これだけで思い出が溢れ出して泣けます。真ん中のトレーは浅く、ツルツルのプラ製で実質何も置けなかった記憶。また、注目はニョキっと延長されたメーターフード。前後重量配分を改善するため、この分だけドライバーを後方にオフセットしているんですね〜。

▲ 空力を追求したアンダーパネルはクリア成形。

 空気抵抗低減&ダウンフォース発生のためにフロア下面はカバーされます。

 が、それじゃせっかく作ったメカが見えなくなっちゃうじゃないか!というわけで「黒で塗る指示だけど、中が見たければ塗らなくてもいいよ?」という親切設計なんですね。タミヤアニキ〜〜!!

 いやしかし、塗るか悩む。無限に悩む。優しい配慮であると同時に「お前はどっちが見たいんだ?」と決断を迫られているのですね。う〜む…。

 ここはこうしよう、あそこはああしよう。悩んでいる間にマルティニを一本空けてしまった。ああ、もう今日は風呂入らなきゃ…。

 思い入れのあるキットだから、時間をかけてゆっくり向き合っていこう。でも、次の週末にホイールだけでも塗ってみようかしら。

 そうして満足いくまで向き合って、いつか完成した時にはマルティニで祝杯をあげよう。甘口のアスティ・スプマンテは、きっと今日よりもっと美味いはずだ。

ゼブラ
ゼブラ

1995年生まれの会社員。模型を通して実物の構造や質感を想像すること、黙々と手を動かして着実に完成に向かっていく過程が好きです。