「アメリカ歩兵の大トロ詰め合わせ」!!このプラモでアメリカ歩兵はだいたいOK。

▲990円で間もなく戦争だーー!!!「戦う兵隊」はカッコいい

 「戦争じゃん……!!」というこの説得力!脳髄に直接突き刺さるカッコよさ!リアルで静かなフィギュアにはない、まるで望月三起也先生のマンガのようなド迫力!!アメリカ兵のカッコよさと様々な軍装を盛り込んだ「タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.48 アメリカ歩兵G・Iセット」はアメリカ兵を知るのにも最高のプラモです。

 「どんなシチュエーションにも使える、アメリカ兵フィギュアのスタンダード」を目指して作られたであろうキットなので、こうして並べてみるとポーズが本当に多様。情景に使いやすいワンシチュエーションを想定してフィギュアがセットされる昨今のキットを見慣れると、片手をポケットに突っ込んでブラブラ歩いてる兵隊と突撃しようと疾走している兵隊と行軍中の兵隊と鉄砲を撃ちまくってる兵隊が一箱に収まっているのはちょっと異様。でもだからこそ、このキットがどのような立ち位置を目指した製品であるかが読み取れるのです。それではいろいろ見ていきましょう!

▲GIの激渋なカッコよさで優勝しているパッケージが目印!!「タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.48 アメリカ歩兵G・Iセット」

 1974年12月に発売されたタミヤの「アメリカ歩兵・G・Iセット」。今年で46歳になるも、いまだに現役のイカしたキットです。単に昔のプラモというわけではなく、タミヤのアメリカ兵プラモのスタンダードを目指したであろう、味わい深い内容の商品でもあります。

▲箱の裏が説明書。活かしたアメリカ歩兵「8人」のスナップ写真だぜ!

 アメリカ歩兵G.I.セットはタミヤMMシリーズでは「48」という番号が振られています。MM第一弾である「ドイツ戦車兵セット」の発売は1968年。たった6年で48個も大小様々なキットが出たわけで、今考えるとものすごいペースです。しかしアメリカ歩兵G.I.セット以前に発売された第二次大戦のアメリカ軍歩兵のフィギュアは、1972年に発売されたNo.13「アメリカ歩兵セット」のみ。当時のラインナップはドイツ軍の車両やフィギュアに大きく偏っており、初期MMでは連合軍はかなり割を食っています。

 という状況をひっくり返すべく発売された……かどうかはわかりませんが、しかしアメリカ歩兵G.I.セットには「このプラモをアメリカ歩兵フィギュアのスタンダードにするんじゃ!!!」という気迫がみなぎっているように思います。というのも、このキットに入っている歩兵の服装とポージングが、異常にバラエティに富んでいるのです。「とりあえずこれ一箱買っとけば、ノルマンディ上陸から1944年末くらいまでのアメリカ歩兵はだいたいオッケー!」という頼もしさこそ、このキットのトロの部分です。

▲箱を開けると兵装のイラストが。「裏地にこだわったスーツ」みたいな粋な箱が最高です

 その濃厚さは、パーツの状態でもムンムン。装備を取り付ける位置が割と適当なことが多く、また装備のバリエーションも物量も豊富なアメリカ兵を再現するべく、大量の手榴弾や「背負子に紐で縛り付けられたシャベル」「二個がひとまとめにされ、ブランケットをくくりつけられたフィールドバッグ(多分M1936)」といった背負う装備も大充実。行軍中のごっそり荷物を持った状態から身軽な戦闘時の姿まで、なんでもござれです。

 この「再現できる装備の幅が妙に広い」というのは、兵隊の服装にも言えるポイントです。例えば上の写真の兵隊は「M1941フィールドジャケット」と「キャンバスレギンス」を身につけており、ノルマンディ戦などでは典型的な格好です。しかし打って変わって下の写真の兵隊は、上着は「M1943フィールドジャケット」だし、履いているのも革製の2バックルブーツ。「もう”戦後”じゃん!!」と言いたくなるような服装です。しかもご丁寧にフィールドジャケットの襟は立てて詰襟っぽく着用(M1943ジャケットの襟の裏には、襟を立てて留められるボタンとフラップがついているのだ)。さぞかし1944年~1945年の冬は寒かったんだろうな……という気持ちになります。

 さらに、このキットがフォローしているのは通常の歩兵用装備だけではありません。この人が着ているのは戦車兵用の「タンカースジャケット」。戦車の中で邪魔にならないよう丈が短くなっており、車内で引っかからないようにポケットなどが配置されているジャンパーのような上着です。元来は戦車兵用なんですが、便利で暖かいジャケットだったことから他兵科でも着られたとか。60年代の名作ドラマ『コンバット!』でヘンリー少尉が着たりしてたので、当時のモデラーやキット開発者にも馴染みがあったのかもしれません。

 というわけで装備だけとっても「完全網羅じゃ!」という気合が感じられるんですが、ポージングの幅の広さと気迫もボリューム満点。例えばこのトンプソン短機関銃を撃っている彼。単にボヤッと撃っているのとは段違いの、この腰の落ち込み具合! この右膝と足首の角度! 銃を持っている右腕がグッと腰の方に引き寄せられていて、「今まさに連射の反動を押さえ込んでます!!」という力の入り方を感じさせるのも超カッコいい。この劇画チックな味わいも、昨今の3Dスキャン技術を活用したフィギュアとはまた違った魅力があって最高です。

 このM1ガーランドを撃っている彼も非常に秀逸。ただ単に腕だけでボンヤリとライフルを保持しているのではなく、背中と肩がぎゅっと内向きに丸くなって「上半身全体を縮めながらサイトを覗いています!!」というジェスチャーになっているのがたまりません。両足を「そんなに開かないでしょ」ってくらい大きく開いて右膝をついているのも、なんとも派手でかっこいい。実際にこの構え方で鉄砲を撃ったらもうちょっと地味なポーズになるとは思うんですが、そんなことは知ったこっちゃありません。70年代のタミヤMMは、大向こうから声がかかりそうなこの芝居の濃さこそがキモなのです。

 やはり「戦う兵隊はカッコいい」という点をシリーズの最初の方で説得力をもって描いたからこそ、当時のモデラーや少年にそのカッコよさがブッ刺さり、それによってタミヤMMは50年以上続く長寿シリーズになったのではないか……。そんな気持ちになるフィギュアたちです。

 というわけで、装備品についてのアキュラシーと兵隊のド派手なかっこよさを詰め込んだ「アメリカ歩兵G・Iセット」こそ、初期タミヤMMの濃厚な味わいを楽しむには最適なキットなのではないでしょうか。アメリカ軍の基本的な軍装もこのキットでだいたい覚えられます!!古いキットですが、エンジョイできるポイントが大量に散りばめられていますよ!

しげる
しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。