ピックアップ・タミヤMMフィギュア!タミヤMMで一番「ジブリ」なアニキたち!?

▲チョット待てメン!!

 突然ですが、タミヤのミリタリーミニチュアシリーズ(以下MM)のプラモでで一番ジブリアニメに近い、ジブリアニメに出てきそうなのってどれだと思います? おれはダントツでこの「フランス歩兵セット」だと思うんですよね……。

▲どれが誰の手足だかわからなくなるくらい茶色い箱が目印!

 タミヤMMはとにかく歴史が長いので、そのラインナップには時期によって「ブーム」のようなものがあります。例えば、2007~2008年くらいのタミヤMMは対仏電撃戦ブームだったような気がします。フランス軍のUEトラクターやB1 bisなど「これが出るの!?」というアイテムがボコボコ発売され、ドイツ軍側も往年の名作だったII号戦車がリニューアルされたり、21世紀版「No.2 ドイツ歩兵セット」である「ドイツ歩兵セット(フランス戦線)」が発売されたりと、往年のマニアが泣いて喜ぶ商品展開がされました。

 で、「フランス歩兵セット」もその流れで発売されたキットのひとつ。名前の通り第二次大戦中のフランス兵のプラモデルなんですが、それにしても大戦中のフランス兵って、なんせ1940年にドイツ軍に負けちゃったから陰が薄い。では負ける前はどんな格好をしてたのさ、というのを知るための格好の題材が、このキットというわけです。

▲箱の裏面も圧倒的茶色さだ

 箱の表裏を見るとわかるんですが、ま~山盛りの唐揚げかなってくらい全体的に茶色い。フランスはその昔全ヨーロッパを相手に喧嘩してたくらいなので、もともとは巨大な陸軍を抱えた国です。しかし1940年の時点で、大暴れしてたのはすでに140年近く昔の話……。加えて第二次大戦は早々に敗退したので、戦中のフィードバックで装備が刷新されることもなかったので、兵隊の装備や見た目はかなりクラシカル。このなんとも言えない昔っぽさが、フランス兵フィギュアの魅力であり、ひいては宮崎駿っぽさにつながっているのです。

▲このヘルメット、世界初の近代的軍用ヘルメットといわれております

 付属しているのはM1935アドリアンヘルメット。これは第一次大戦中に世界でも最初期に作られた軍用ヘルメットのほぼそのまんまの形状。超頂部についたリブがカッコいいけど邪魔そうです。その下の2番のパーツは、ド・ゴールが被ってたのでおなじみのケピ帽ですね。

▲Mle1924/29は、セミオート/フルオートの切替用に引き金が2個ついているという特徴もバッチリ再現

 キットについている銃も、ドイツやアメリカの兵隊を見慣れた目からするとなんかちょっと珍しいものばかり。MAS 36ライフル(余談ですがこの銃を大幅に改良したFR F2ライフルは近年もフランス軍によってアフガニスタンなどで使われています)やシャテルローMle1924/29機関銃とか、「なんとなく古そうな鉄砲の最大公約数」みたいなデザインがグッときます。

▲チョット待てメンは下士官。左右に跳ね上げられているコートの裾に注目!

 で、組み立てるとこんな感じ。この人は下士官なんでコートの形が他の人と違ったり足回りが革製のレギンスだったりで、他と差がついていますね。で、フランス軍のコートの大きな特徴がこの裾の処理。見ての通り左右の裾を上げて、横でボタン留めしてはしょっております。これはコートを着た状態でも走ったり伏せたりしやすいようにという工夫で、当時のフランス兵のコートはだいたいこういうことができるようになっておりました。

▲この人たちは一般の兵隊。士官とは足元が違うぞ

 クラシックだな~という感じが強いのが、一般の兵隊がつけている巻きゲートル。日本軍も巻きゲートル勢として有名ですが、第一次大戦時にはイギリスなどでも用いられていた装備。つまり、第二次大戦の頃にはちょっとだけ時代遅れっぽいアイテムになっていたのです。それを堂々と巻いているフランス兵の足元からは、なんとなく第一次世界大戦の匂いがしてきます。

▲フランス陸軍だよ!全員集合!! しかし、改めて見るとコート着てる人たちはかなりの厚着だなあ

 全員集合するとこの雰囲気。腰についている革製のポーチとか、やたらデカい水筒とか、厚ぼったい服の生地の感じとか、19世紀から地続きな感じがする各部のデザインがたまりません。コートだってもっと軽くて断熱性の高い生地があれば同じ生地でズボンを作ればいいから、わざわざあんなに長く作る必要もボタンで裾をはしょる必要もないわけです。そう思って見ると、「断熱性があって頑丈な生地が分厚いウールしかなかった時代の兵隊の服だな……」という実感が湧いてきませんか……?

 そもそもフランスは第二次大戦の最初の方でリタイアしたので、この人たちの服装は実質大戦間の兵隊の服装なんですね。そう思って見ると、このフィギュア全体から漂うそこはかとない『宮崎駿の雑想ノート』的バイブスもなんとなく納得がいきます。ていうか、服装的にはほとんどラピュタに出てきた兵隊なんですよねコレ。そういう意味で、このキットこそがMMで最もジブリっぽいんじゃないかと思っております。というわけで、このプラモは実はラピュタのロボット兵のプラモとかと一緒に並べると幸せになれるんじゃないかな~? 我こそはという人は、ぜひ試してみていただきたい組み合わせです。

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しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。