ボア・ハンコックは言った。「どんな塗装も許される」と。

 ボア・ハンコックが好き(おもに見た目が)、という理由で買ったプラモ。ハコを開けたら目玉が飛び出しそうな超絶ディテールの洪水! こんなの、絶対作りたいし知らなかったのが悔しいじゃない!!

▲帆に入れられたヒダヒダ。規則正しく、繊細で、ボリューミーな曲面。
▲柱の奥に回廊と扉を有する建造物が爆誕。
▲あ、フネなんだね。『ONE PIECE』は海戦マンガです(本当に!?)
▲ヨドバシカメラで1370円(参考価格)でした。

 バンダイスピリッツの偉大なる船コレクション、九蛇海賊船です。フネのプラモなのでボア・ハンコックができるわけじゃないんですが、これが本当におもしろい。フネの模型でありながら、キャラクター模型であり、同時に建築物的でもある。

▲イロプラなんですけど、この板張りの甲板は一枚一枚色を入れてトーンを変えたくなるディテール!
▲特徴的な船首の蛇も仲良く中央分割でパーツ化されており……
▲鴟尾を頂いた屋根のも塗りたくてタマランチ!!
▲ランナーは言う。「塗らなくても大丈夫!なぜなら最初から色が付いているから……」と。

 「偉大なる船コレクション」はタッチゲートというニッパーを使わなくても手でパーツをもぎ取れる特殊なゲート(ランナーとパーツを繋ぐ細い部分のこと)を採用していて、さらに色分けしまくりのプラスチックパーツと超豪華なシールによって「組み立ててシール貼るだけでもいい感じにできますよ!」というアピールがされています。「なんだ、プラモ作ったことない人向けか」「オレはそんなの興味ないね」と言うことなかれ!なんたって、相手はボア・ハンコックだぞ。

▲一番大きいのが「手で外せるアピール」だし、右の写真ではフネがアクションベースでフネが浮いている。アクティブ・ハート。
▲もぎっ
▲水面パーツがあります。

 船体は喫水線の上下で分割できるので、水面に浮いた状態(=ウォーターラインモデル)にも、水面下まで再現された状態(=フルハルモデル)にもなる。この時点でそのへんの艦船模型に勝るとも劣らないプレイバリューがあります。しかもこの水面パーツの完成度が異様に高い。
 私はこのプラモのとても素晴らしい造形と元デザインの色彩センスの虜になってしまい、塗るべきなのか、このプロダクトの意図するところ(豪勢なシールを貼って完成させること)を尊重するべきなのか、悩みに悩みました。助けて、ボア・ハンコック。

▲ハンコック様みずから「塗装しろ」とおっしゃる!? 好き!
▲対象とするユーザーが広すぎる。塗料を調合して生まれるのはサバイバルの海。
▲シールも透明の地(=塗装派用)まで用意されているあたり、「塗るも塗らぬも君の自由じゃ!」というポジティブな突き放しがある。

 この情緒豊かなディテール、美しい凹凸に富んだ船体、そして生物的な表現や建築物特有の素材感までもが混在するプラモ、他に似たジャンルがなかなか思いつきません。そのまま刺し身でサクサクっといただくもよし、最上の塗料と最上の筆でじっくりと塗り込むもよし……(スミ入れやシェーディングしたら絶対気持ちいいし、その後にドライブラシでエッジを明るく起こしたらすごくすごく気持ちよくなる。絶対に)。
 ボア・ハンコックが「わらわが美しいから、どっちでもいいよ」と我々に判断を委ねてくるこのプラモ、あまりにもマゾヒスティックな自分の危険な喜びがムクムクと湧いてきたので、まずは組んだ状態でシールを貼らず(判断を保留し)、机にそっと置いていまこの時間を過ごしています。あなたなら、どうする。

■BANDAI SPIRITS ワンピース 偉大なる船(グランドシップ)コレクション 九蛇海賊船 (From TV animation ONE PIECE)

<em><a href="/author/kalapattar/">からぱた<br></a></em><a rel="noreferrer noopener" href="https://twitter.com/kalapattar" target="_blank">@kalapattar</a>
からぱた
@kalapattar

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。