プラモ製作の鬼門、「デカール貼り」を劇的アシストする最終兵器がタミヤより出現!

 水転写デカールを貼るのが苦手だという1億の民よ、コレを買おう。本当に本当に目からウロコがマッハ30で飛んでいくスーパー新兵器だ。従来のデカール軟化剤とは一線を画すパワー。これがあるとないとでは、模型製作体験がまったく違うものになるくらいすごい。あまりにもすごいので、友達全員に教えたい。これはすごい。

▲左が従来品「マークフィット ハードタイプ」。右が新製品の「スーパーハード」である。

 水転写デカールというのは薄いフィルムに印刷されたシールのようなもので、台紙ごと水に漬けることでフィルム裏面のノリがふやけてプラモの表面にスライドして乗せることができるというシロモノ。スライドマークとも呼ばれる。

 当然ながら、水でフヨフヨした透明のフィルムをプラモの表面に密着させるのは難しい。職人的な経験とカンを必要とする、プラモ製作の鬼門だ。しかもだいたいは仕上げの段階で一発勝負。失敗するとこれまでの努力が水の泡になってしまうということもあって、みんな苦手意識が強い。

 で、このタミヤから発売されたマークフィットというのはデカールを軟化させてプラモ表面に密着させるためのケミカルだ。ハードタイプというのは通常のものより軟化させる力が強いのだが、新製品のスーパーハードは瓶に「上級者向け」と書いてあるくらい、軟化させる力が強い。ソフトにする力がスーパーハードなのだ。一休さんもびっくりである。英語ではスーパーストロングって書いてあるんだけどね。

 今日の戦いの場はこのパーツだ。ボア・ハンコックのフネの帆である。帆そのものが大きな曲率を持っている上に、横に走る細かなひだと、縦に走る細い凸線がデカールの定着を拒む。こんなところにデカールを貼るの、ビビるよね。しかも俺は性格が悪いので、パーツにGSIクレオスのプレミアムトップコートつや消しを吹いて、ミクロの世界でも凹凸を作ることによってデカール貼りの難度を上げておいた。

 実験台となるのはこのデカール。イカした漢字をバンバン貼れるヴェルテクスの「漢デカール3」だ。このカッコいい筆文字は私の妻が書いているのでみんなもどんどん買うと妻の缶ビールがグレードアップするなどの効果がある。

 採用するのは龍と虎。龍虎二大字は相まみえがちなので、このデカールでマークフィットの性能の違いを見てみよう。

 まず入場してきたのはハードタイプ(従来品)。作業場でガンガン使っているので蓋が汚れていてごめんなさい。とりあえずパーツ表面にこれをビチョっと塗って、龍の字を上にそっとスライドさせて乗せる。

 乗ったばかりだと、フィルムの剛性によって表面のディテールに密着していないのがわかる。ここで綿棒を転がしてパーツとデカールの間の水分を押し出していくことで密着を試みる。

 コロコロして乾燥させているうちに、今度は虎の字を貼る。

 次に入場してきたのは新製品のスーパーハードタイプ。表面張力が低く、サーッと広がる印象。パーツの表面にこれを塗ってから虎の字をスライドさせ、同様に綿棒でコロコロする。結果の差は歴然だ。

 おおーっと!プレミアムトップコートつや消しとハードタイプが反応して、白く曇ってしまった!じつはこれ、予想済みのトラブル。タミヤのWebサイトに「※塗装を侵す場合があるので、特にアクリル塗料の上から使用する場合には十分注意してください。」と書いてあるとおり、アクリル系の塗料を侵してしまうほど溶剤の成分が強いようだ。ラッカー系、エナメル系の塗料か、プラの地に直接使用する場合は大丈夫。スーパーハードを使うときは、予め貼ろうとしている部分の塗料を侵さないかどうか、じゅうぶんテストすること。

 さて、密着度の検証である。

 龍の字が凹部分に追従しきれず、縦のラインにも引っ張られたような印象で浮いてしまっているのに対し、虎の字は完全に複雑な表面形状に追従し、透明フィルム部分もカンペキにディテールの形状通りに光を反射しているのがわかる。

 トラブル例だけでは分かりづらいと思うので、虎と相性の良い文字、「猛」でプラ地に直接貼った状態もお見せしておこう。

▲透明フィルム部分は全く見えず、文字がディテールとカンペキに一体化している。大成功だ。

 さて、デカールの透明部分とつや消し塗装面の間にできるミクロな空隙が光を乱反射して白っぽくなってしまう現象をシルバリングと呼ぶ。これを防止するには「予め光沢の塗装面を作ってからデカールを貼り、最後につや消しコートする」という方法論が知られているが、つや消しの塗料しか存在しない色も多数あるので、いつでもそれが実現できるわけではない。

 このように、密着しているところはグレーだが密着しきれていないところが白くなってしまっている完成品がある。完成したのはおよそ50日前で、完全に乾燥している状態だ。この上から、先ほどのスーパーハードを塗る。ちょっとずつではなく、もうビャーっと全体がビチャビチャになるまで塗った。

 なんということだ。シルバリングがみるみる消えていくではないか。ラッカー塗料による下地塗装はいっさい侵されていないことも書き添えておこう。

 ということで、つや消し表面だろうが複雑な曲面だろうがデカールをビシバシ密着させてしまうこの最終兵器により、下地の形状や質感を気にせずデカールを貼れるようになった。

 気をつけたいのは、塗料の種類によっては塗装面を溶かしてしまうこと、デカールがみるみるうちに柔らかくなるので、デカールを所定の位置に移動する際にくちゃくちゃになってしまう危険性が高まることである。

 このへんは練習するしかないのだが、それにしてもデカールを貼るときにこうしたケミカルが存在することは極めて素晴らしいこと。ぜひとも導入して、イカした完成品を作ってみてほしい。

 みなさんも、ぜひ。

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からぱた
@kalapattar

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。