タミヤのプラモで覚えた砂漠の味を忘れられない僕らのための、『アーマーモデリング』最新号。

 人生で一度だけ、視界いっぱいに広がる砂漠を見たことがある。ドバイからブエノスアイレスへと向かう飛行機の窓から眺める砂の大地は地平線まで広がっていて、よーく目を凝らすと人間の営みや大きな動物のようなものがチラッと見えたり、周囲に街らしい街もないのに突如として近代的な空港が見えたりと、湾岸都市や山林に馴染んだ日本人にとってはかなり強烈な体験だった。

 第二次世界大戦の序盤で繰り広げられた北アフリカの戦いは、そんな砂漠が舞台となった。ドイツ人にしてもイギリス人にしても、砂漠で生まれ育ったわけでもない兵士がいきなりめちゃくちゃに強い戦車や火砲、戦闘機を持っていって陣取り合戦をやるというのはとんでもない毎日であったはずだ。水を手に入れるのも、砂まみれの装備をメンテナンスするのも、そもそも砂まみれの土地で何かを動かすことも、戦争という非日常の中でとりわけ過酷な条件であったに違いない。

『アーマーモデリング』の最新号では、そんな北アフリカ大機甲戦にフォーカスして「デザートカラー」を切り口にさまざまな作例と論考を特集している。なにしろ戦車模型ユーザーのほとんどがタミヤの1/35 MMシリーズで育った人たちであろうから、北アフリカの戦いについてはタミヤのプラモを作って知り、タミヤのプラモの説明書を読んで学ぶというのが自然な流れ。ハコを開けて成型色がベージュなら「ああ、これ砂漠で戦ってたんだ」と漫然と信じたりするわけで、タミヤMMという存在が(戦車はおろか砂漠そのものについてさえ!)我々のイメージに及ぼした影響は大きい。

 砂漠という特殊な環境ゆえに、当然ながら読んでいるだけでヒリつくようなエピソードや特殊な改造を施された兵器たち、あっと驚く奇想天外な作戦には枚挙にいとまがない。そうした知識やイメージを前提に、アニメ作品でも「砂漠戦」というのは欠かせないスパイスとして現在でも多用されている。

 戦車も飛行機もモビルスーツもとりあえずベージュに塗って、「砂漠戦なのです」と言うと、いきなりカッコよくなった気がする。そこにあるのは砂漠という得体のしれない土地に対するエキゾシチズムであり、タミヤのプラモをいっぱい食べて覚えた「大人の味」への憧れと言っていいだろう。ガンダムも、ボトムズも、ダグラムも、ストーリーから砂漠を抜いたら全体のコクが無くなってしまうに違いない。

 どっこい、この特集では「北アフリカの戦いにダークイエローはご法度だぜ」とか、「デザートカラーにもいくつか種類があるんだぜ」とか、「戦車を現地に持っていって塗り直したとは限らないんだぜ」という、タミヤのプラモを作ってきた人にこそ突き刺さるような話がたくさん出てくる。それらはプラモの歴史とともに積み重ねられてきた砂漠戦についての貴重な研究成果であるわけで、読んでいて「えーっ!」と驚くことがいっぱいだ。

 「なんとなく、砂漠」とひとくくりにするのではなく、北アフリカで何が起きていたのかを改めて知る。これは戦車モデラーだけでなく、プラモデルを含むさまざまなメディアで醸成されてきた「砂漠戦」のイメージを刷新するために必要不可欠なインフォメーションである。「知ったからには、必ずこうしなければならない」ということはない。ただ、知っておくことで広がる新しいイマジネーションがあなたのプラモライフの糧となり、より多くの人の共感を呼ぶ塗装やディスプレイを身につけることができるようになるはずだ。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。