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【レビュー】ドット絵の向こうにいたゼビウスの自機を、いまこそプラモデルで手中に収めよう/WAVE ソルバルウ

 1983年のシューティングゲーム『ゼビウス』に登場するソルバルウは、登場した瞬間から多くの人々を惹きつけるSF戦闘機だった。ゲーム画面では小さなドット絵として描かれていたけど、当時のアートワークを見れば、魅力的なシルエットの機体に細かなディテールがびっしりと描き込まれている。当時のプレイヤーがゲーム画面で操っていたのは、そのハイデフなメカデザインをピクセルという表現手法に落とし込んだ姿だったのだ。2026年に再販されたWAVEのソルバルウを組み立てていると、このSF戦闘機が40年以上前から持っていた凄まじい造形の魅力と、それを過不足なくプラモデルにした設計のうまさに感心してしまう。

 いまのゲームならば画面の中に精緻な3DCGの戦闘機が飛んでいて、その機体を自分で操作できる。アートワークとプレイアブルな画面の間にほとんど差異はない。ところが80年代のゲームでは、プレイヤーが操るキャラクターと、その世界を説明するために描かれたイラストの情報量は桁違いだった。画面の中のソルバルウは小さく、そのアイデンティティを識別するのに必要な形状だけが強調されている。しかし、ゲームの世界を描いたイラストには機体の質量や材質、複雑な構造まで感じさせるSF世界が広がっていた。プレイヤーはゲーム画面を見て「何かが足りない」と感じていたわけではなく、画面の中の単純な記号がちゃんと高解像度なイメージと接続していることに興奮し、だからこそゼビウスの世界に没入していたのである。

 ソルバルウのデザインを手がけたのは、当時ナムコに在籍していた遠山茂樹氏だ。開発初期に作られたラフやドット絵をもとに本格的なメカデザインを行い、それを受けてゲームのドット絵も改めて描き直されたという。模型だって実物の形状をただ縮小すればよいわけではなく、小さくなったときの見え方に合わせて誇張や省略を加える。あのドット絵にも、ある種の模型的な表現の技術が使われていたと考えると、なんとも愉快ではないか。

 WAVEは2005年にソルバルウをポリストーン製の塗装済み完成品として発売し、2013年にはほぼ同じプロポーションとディテールを持ったプラモデルを送り出した。接着剤を使わずに組み立てられるスナップフィット式で、設計は非常に素直である。機体の色分けは部品の分割によってかなりのところまで実現され、細かなマーキングはシールで補える。エアブレーキの開閉も選択式になっているが、こうした要素を盛り込みながら、むやみに部品を細分化していないし、トリッキーな組み立ては求められない。立体として見せたいものと、プラモデルとしての組み味との折り合いが、実にいいところで着地している。

 2013年にこのキットが発売されたとき、僕は月刊モデルグラフィックスの編集者だった。ソルバルウの作例をモデラーのハタ氏に発注し、誌面に掲載したときの記憶はいまも宝物だ。完成した作品では、プラスチックの肉厚やエッジの処理、ディテールの粗密、細部の色彩などが丁寧にコントロールされていた。そこに現れたのは誰も見たことがないような「オレ流に新解釈したソルバルウ」ではなく、かつてアートワークで見た、あの精緻なSF戦闘機の雰囲気をちゃんと湛えていた。なにか新しいものを見たというより、丁寧に手を入れたからこそ原点に帰ってきたような感動があった。ただ、雑誌の編集者という仕事は、次々に目の前を通過していくプラモデルを記事にして送り出す仕事でもある。このキットの完成した姿はよく知っていたけれど、当時僕自身が組み立てたわけではなかった。

 それから13年経って、ようやく自分の手で組み立てる機会が巡ってきた。改めて、これが本当にいいプラモデルなのである。派手な仕掛けも過剰な精密さもないのだけれど、パーツを組み合わせていけばスルッと色分け済みのソルバルウが姿を現す。2013年に見た作例の素晴らしさと、いま自分が味わっている組み立ての気持ちよさは、もちろん別のものだ。しかし、作例を通して知っていた造形の魅力を、今回はキットそのものが教えてくれた。あのソルバルウは、こんなにちょうどよく設計されていたのか! と嬉しくなった。

 ただし、ソルバルウにはひとつ厄介なところがある。斜め後ろから広角レンズでグワーッと迫った、あの強烈なパースのついたイラストの印象があまりにも強いのだ。だからいろいろな角度からファインダー越しに眺めると「あれ、こんな形だったっけ?」と少々面食らう。考えてみれば当たり前で、どれほど精緻なメカデザインでも、イラストには見る角度やパースによって成立する格好よさがある。プラモデルはその視点の呪縛からデザインを解放し、描かれていなかった方向からも眺められるようにしてしまう。もちろん、描かれていない部分の辻褄をどう合わせるかも立体化する人間の腕の見せどころ。あのソルバルウをいろんな方向から眺めて「へえ、こうなってたのか!」と驚けるのも、プラモデルならではだろう。

 そもそもソルバルウは立体にすることでようやくリアリティを獲得したメカではなく、ゼビウスがこの世に放たれた時点ですでにSF戦闘機としての佇まいを備えていた。WAVEのキットは、そのデザインをむやみに現代風にアレンジすることなく、とてもストレートに立体へと翻訳した。しかも、あれほど見慣れているはずのソルバルウなのに、組み立てて眺め回してみると、まだ知らないソルバルウが現れる……というオマケ付きだ。2026年にソルバルウのプラモデルを懐古趣味として片付けてしまうのは、あまりにももったいない。40年以上前から知っているはずのSF戦闘機を組んで、まだ知らないカタチに出会える。WAVEのソルバルウは、そういうプラモデルなのである。

著:遠藤 雅伸
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からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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